CHIBA UNIVERSITY

千葉大学 OBOG インタビュー

医学部卒は現役知事で唯一。
政治家としての原点は千葉大学医学部附属病院時代に取り組んだ地域医療

長崎県知事 / 医師・医学博士

大石 賢吾さん

※記事に記載された所属、職名、学年、企業情報などは取材時のものです

長崎県庁舎の前に立つスーツ姿の大石 賢吾さん

大石 賢吾(おおいし・けんご)

長崎県知事/医師・医学博士

米国カリフォルニア大学デービス校卒業。長崎大学熱帯医学研究所勤務後、学士編入学制度で千葉大学医学部医学科に入学し卒業。同大学院医学研究院博士課程修了。臨床医を経て、2020年に厚生労働省に入局。2022年に出身地の長崎県知事選挙に出馬し当選。現職知事で最年少、唯一の医学部卒。

現役最年少の県知事として、長崎県政に取り組む大石賢吾さん。
医学部出身ながら政治家を志した理由、知事就任から1年半を経ての手応えや今後の抱負、千葉大生に向けたメッセージなどを語っていただきました。

政治家を意識した原点は千葉大学病院での経験

医学部出身でありながら政治を志した理由を教えてください。

大石

私は高校卒業後に米国のカリフォルニア大学で生化学と分子生物学を学び、帰国後は長崎大学熱帯医学研究所での勤務を経て、医師免許を取得するために千葉大学に学士編入学しました。初期臨床研修後は、内科の臨床にも携わりましたが、このときの経験が政治家としての原点になっています。当時、私は地域医療に関心があり、訪問診療に携わっていたのですが、エレベーターのない集合住宅の上層階で老々介護をしている患者さんがいました。何かあったときにご不便だろうと思い、改善策を模索しましたが、地域で対応できる福祉サービスも十分でなく、サービスがあっても経済的に利用できないと言われ、医師としての限界を感じました。医師は病気の治療はできますが、生活環境を改善し、安全安心な暮らしを提供するには公助の在り方を変えていく必要があります。公助の在り方を変えるのは政治の役割ですが、それであれば政治家になろうと考えました。

長崎県知事に出馬するまでの経緯を教えてください。

大石

政治家を志したとはいえ、すぐに政治家になれるわけではありません。政策立案や予算の立て方などを学ぶ必要もあります。そこで、まずは行政面から福祉や医療に関わろうと考え、厚生労働省に入局しました。同省では医政局地域医療計画課に所属し、日本医療研究開発機構(AMED)への出向も経験しました。転機が訪れたのは2021年の暮れ、翌年春の長崎県知事選挙への出馬というお話をいただいたことです。国政への思いもありましたが、県知事なら裁量権が大きいので、ふるさと長崎県を日本一住みやすい県にすることで、国全体を変えていく道もあると考え、出馬を決めました。3期12年を務めた現職との厳しい選挙戦でしたが、541票差で当選することができました。

子ども施策に注力して県民が誇りに思える長崎へ

知事就任からの1年半を振り返ってください。

大石

地方行政は中長期的な計画も多く、継続性も重要なので、まずは前知事の路線を引き継ぐことから始めました。一方で、多くの有権者が私を選んだのは、変化への期待があったと思いますので、選挙でお約束したことはスピード感を持って実行できるよう努めています。この1年半、県政の難しさや責任の重さを実感していますが、だからこそ長崎県を日本一住みやすい県にするんだというモチベーションも上がっています。また、私が県知事になった2022年は新型コロナウイルス感染症がまだ2類相当だった時期ですが、厳しい行動制限が緩和されつつある時期でもありました。経済活動と感染対策を両立させるうえで、知事になる前の地域医療や行政の実務経験が役立ったと思います。

今後、長崎をどのような県にしていきたいですか。

大石

県民の皆さんが誇りに思える県にしたいと思っています。そのために、今後の県政の軸として力を入れているのが子ども施策です。ポイントは2つ。1つは出生率の改善です。人口を維持するために必要な出生率は2.07ですが、長崎県は子どもを産みたいと思う人の割合がこれを上回っています。にもかかわらず、実際の出生率は約1.6にとどまっているので、子どもを産みたい人が安心して子どもを産めるようにするための政策を打ち出しています。もう1つは今後、社会がどのように発展していくのか見通しを立てるのが難しい中、長崎県で産まれ育つ子どもたちを、社会の変化やテクノロジーの進化に対応して活躍できる人材に育てていくことが、知事としての責務だと考えています。

また、離島や山間部の多い長崎県は、福祉や地域医療の持続可能性にも課題があります。これには臨床医として地域医療に取り組んだ者として、改善への強い思いがあります。西九州新幹線の開通やそれに伴う開発といった環境整備なども進んでいます。県としての魅力がアップすれば、企業誘致や県外からの移住といった未来の活性化にもつながると考えています。

人生の可能性を信じてやりたいことにチャレンジを

千葉大学入学前に米国の大学に通われた理由を教えてください。

大石

日本で医師を目指すには、国内大学の医学部に入るのが一般的ですが、世界最高水準の教育を見てみたいと思い、カリフォルニア大学への進学を決めました。英語が苦手で不安はありましたが、私は離島出身で、中学卒業と同時に1人で本土に渡り高校生活を送った経験があったので、行けば何とかなるという気持ちで渡米しました。海外の大学でみっちりと基礎研究に打ち込んだ経験は、臨床や厚生労働省といったその後のキャリアで大いに役立ちました。

最後に、学生へのメッセージをお願いします。

大石

人生にはいろいろな可能性があるので、やりたいことを追い求めてください。私自身、学生時代には政治家になるとは考えてもいませんでした。そんな私が、地域医療に触れたことで政治家を志し、アカデミアから離れる不安を持ちながら厚生労働省で行政の実務に携わり、長崎の未来を明るくしたいという思いで県知事選に挑戦しました。それぞれの局面で自ら決断し、一歩を踏み出したから今があります。優秀な千葉大生には大きなポテンシャルがあるので、挑戦する気持ちを強く持ってください。皆さんが社会に出て活躍されることを期待しています。

大石 賢吾さんと中谷晴昭理事

大石知事の千葉大学時代の恩師、中谷晴昭理事が表敬訪問。「当時の学士編入学は5人の枠に200人以上の応募がありました。研究医としても優秀で、当時から決断力があったと記憶しています。最年少、そして唯一の医学部出身の知事として、2期目、3期目と続けて長崎県の発展に貢献してください」とエール。

※記事に記載された所属、職名、学年、企業情報などは取材時のものです

この記事をシェアする

千葉大学 OBOG インタビュー

OGOB MESSAGE

HOMEに戻る