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千葉大学 OBOG インタビュー

活躍する選手を見るのがやりがい。
故障を予防しコンディションを整えることでアスリートの能力を引き出す。

スポーツドクター / 日本サッカー協会診療所院長

土肥 美智子さん

※記事に記載された所属、職名、学年、企業情報などは取材時のものです

土肥 美智子(どひ・みちこ)

スポーツドクター、日本サッカー協会診療所院長

千葉大学医学部卒業。卒業後は放射線診断医として東京慈恵会医科大学に勤務するかたわら、主にサッカーのスポーツドクターとしての活動を始める。2002年以降は国立スポーツ科学センターに所属し、2020年には兼務する形で日本サッカー協会診療所院長に就任。北京オリンピックから4大会にわたり日本選手団のチームドクターを務め、東京大会では、新型コロナウイルス感染症対策の責任者としても活躍した。

女性スポーツドクターの先駆者として日本代表チームやアスリートをサポートし、幕張の日本サッカー協会診療所の院長も務める土肥美智子さん。
スポーツドクターを目指した経緯ややりがい、学生に向けたメッセージなどを語っていただきました。

スポーツドクターとしてコロナ感染対策においても貢献

スポーツ医学とはどのようなものですか。

土肥

スポーツには怪我がつきものなので、もともとは治療やケアを行うのがスポーツ医学でしたが、現代はこれに加えて、怪我や病気を未然に予防したり、より良いパフォーマンスを発揮できるようにコンディションを整えたりすることが重視されています。また、栄養学、運動生理学、さらにはメンタルケアなど、幅広くアスリートをサポートする分野を含みます。チームスポーツであればチームスタッフとして帯同するケースもありますし、国際的なスポーツの大会であればメディカルオフィサーとして大会の医務をサポートするような場合もあります。

スポーツドクターならではの特徴ややりがいを教えてください。

土肥

一般の医療では医師が中心ですが、スポーツの場合は選手本人やチームの監督が主役なので、チームスタッフの一員としてサポートするのがスポーツドクターならではの特徴です。やりがいに感じるのは、ドクターというプロとしての役割を果たすことで、選手の活躍を見ることができる点です。特に今はコロナ禍。私がサポートするサッカー界でも、試合を実施するかどうかの難しい判断を迫られることもありましたが、検査や感染対策を徹底してクラスターの発生を防ぎながら試合を行うことができました。スポーツドクターとしての経験や知識を総動員して貢献できた2年半だったと思います。また、過去に比べると、スポーツ選手の社会的な評価も高まっており、スポーツドクターのニーズや役割もそれだけ高まっています。そういう面でもやりがいを感じます。

日本サッカー協会の診療所院長を務める土肥さん。同協会の医学委員会のメンバーでもあり、アンチ・ドーピング部会の部会長を務めるなど、アスリートのサポートに取り組んでいる。2018年開催のFIFA WORLD CUPにはチームドクターとして参加。
日本サッカー協会の診療所院長を務める土肥さん。同協会の医学委員会のメンバーでもあり、アンチ・ドーピング部会の部会長を務めるなど、アスリートのサポートに取り組んでいる。2018年開催のFIFA WORLD CUPにはチームドクターとして参加。

恩師の勧めで選んだ放射線科で診断の経験を積み重ねる

スポーツドクターを目指した理由を教えてください。

土肥

私は小中高一貫のカトリック系の高校出身で、シスターたちの活動を見てきたこともあって、早い段階から医療の道で人助けがしたいという気持ちがありました。千葉大学医学部を選んだのは、受験科目の配点が自分にとって有利であること、東京の自宅から通えることなどが理由です。大学受験が終わって、勉強に対する熱意を失いかけた時期もありましたが、これからずっと学び続けられるのは何かと考えたときに、スポーツ医学が頭に浮かびました。私自身、高校ではバスケットボール部、大学ではヨット部に所属してスポーツが好きだったので、好きなことなら一生関わっていけると思ったからです。

大学卒業後は放射線科医として勤務されたそうですね。

土肥

当時、スポーツドクターは定義もあいまいで、市民権を得ているとは言えない状態だったため、千葉大学を卒業後、スポーツ外来を開設していた東京慈恵医大の先生を訪ね、そのまま同大学で放射線科医になりました。放射線科を選んだ理由は、その先生から「どんな科のドクターになるにしても、診断は全ての科において基本であり重要である」と勧められたからです。この大学ではX線や超音波を用いた検査の診断を行うのは放射線科でした。また、ちょうどこの時期にMRIが登場し、骨だけでなく筋肉や靱帯の状態を診断できるようになったことで、「スポーツ医学の診断がこれで変わる!」と思ったことを記憶しています。スポーツドクターは現場での判断力が問われるので、この時期に診断の経験をしっかり積んだことが役立ちました。

 

幕張の日本サッカー協会診療所と千葉大学との連携を深めたい

今後やってみたいことはありますか?

土肥

私のキャリアも30年を超え、これからは後進の育成に力を入れたいと考えています。この30年でスポーツ医学はかなり進歩しましたし、認知度も高くなってはいます。けれども、まだまだ成熟と言えるまでには至っていませんし、スポーツドクターだけで食べていけるのはごく一握りです。スポーツドクターは医療のプロですから、報酬も含めてプロフェッショナルとして活躍できるような仕組みづくりができたらいいなと考えています。特に私が注目しているのは、女子スポーツの世界です。世界で結果を出している種目も増えていますし、それに伴って女性のメディカルスタッフのニーズも高まっているので、女性スポーツドクターの活躍の場を広げるような貢献をしたいと考えています。それからもうひとつ。私が院長を務める日本サッカー協会診療所は千葉市の幕張にあり、同市内にある千葉大学病院とは協定も締結していることから、医療面での連携ができつつあります。こうした連携は今後も広げていきたいと思います。

最後に、学生の皆さんへのメッセージをお願いします。

土肥

大学で過ごした時間や友人は、人生を振り返ったときにありがたみがわかります。千葉大学のいいところは、総合大学なので多様な学部の学生同士の交流が可能な点です。私自身、大学時代は全学のヨット部に所属しましたが、医学部以外の学生と知り合ったことで、視野が広がったように思います。当時の友人とは先日も一緒にゴルフに行きましたし、千葉大学での恩師は私がスポーツドクターを目指して慈恵医大に移るときに「もしダメだったら戻ってくればいい」と励ましてくれました。人の縁を大切にしながら大学生活を送ってください。

※記事に記載された所属、職名、学年、企業情報などは取材時のものです

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