CHIBA UNIVERSITY

千葉大学 OBOG インタビュー

イタリア歌劇に魅せられて表現者の道へ。
クラシックやオペラの魅力を多くの人に届けたい。

カウンターテナー歌手 / オペラ演出家

彌勒 忠史さん

※記事に記載された所属、職名、学年、企業情報などは取材時のものです

グランドピアノの前に立つ彌勒 忠史さん

彌勒 忠史(みろく・ただし)

カウンターテナー歌手 / オペラ演出家

千葉大学教育学部、同大学院教育学研究科修了後、東京藝術大学声楽科を卒業。国内外のコンサートやオペラのほか、テレビやラジオなどにも出演、歌舞伎や能などの他分野芸術とのコラボレーションにも積極的に参加するなど、幅広く活躍中。平成24年度、第63回芸術選奨文部科学大臣新人賞の音楽部門を受賞。

カウンターテナー歌手・オペラ演出家としてジャンルを超えて幅広く活躍している彌勒忠史さん。
教員や歌舞伎役者を志したエピソード、コロナ禍で公演が中止になるなかでの模索、千葉大学時代の思い出などを語っていただきました。

クラシック音楽やオペラで表現者として活動する

カウンターテナー歌手とはどのような仕事ですか

彌勒

カウンターテナーというのは、ファルセット(裏声)で歌う男性歌手の総称とされていますが、同じカウンターテナーのなかでもいろいろな音域があって、私の場合は音域がメゾソプラノなので、正しくは男性メゾソプラノ歌手になります。仕事の内容は、クラシック音楽のコンサートやオペラに出演することが中心です。新型コロナウイルス感染症の影響で現在は公演がなくなっていますが、幸いテレビやラジオに出演する機会をいただいているので、多くの方にクラシック音楽やオペラの魅力をお伝えできるよう心掛けています。最近では、演歌歌手の方と共演させていただくなど、これまでクラシック音楽やオペラにあまり関心のなかった方にも知っていただく機会が増えてきました。

演出家としての仕事について教えてください。

彌勒

私の場合は、演出といってもオペラに特化しています。オペラというのは、作曲家が台本を解釈したうえで曲が付けられているので、演出家は違う解釈を提示するのではなく、作曲家の解釈を理解し、それをどのような世界観で見せるのかが勝負です。オペラは西洋発祥なので、キリスト教の影響や時代背景など、日本とは文化基盤が違います。そうしたなかで、日本のお客様に楽しんでいただくには、私自身も理解を深める必要がありますし、能の舞台を使ったり、和のテイストの衣装にしたりといった工夫をして、なるべく親しみやすく、間口を大きくするよう努めています。本家のオペラも、最初はイタリアの宮廷から始まったものが次第に開かれたものに育っていきました。日本でも日本ならではのオペラが育つといいと考えています。

彌勒さんが演出したオペラ『カーリュー・リヴァー』。舞台美術や衣装などに和のテイストを取り入れた独自の世界観が高く評価されている。
2020年10月18日、公益財団法人横須賀芸術文化財団主催、よこすか芸術劇場

多くの人に劇場に来てもらえるようクラシックやオペラの裾野を広げる

コロナ禍での活動はいかがですか。

彌勒

コンサートもオペラも見に来ていただくのが一番なのですが、公演が開催できなくなり、無観客オンライン配信なども模索しています。オンライン配信の良さは、普段はクラシック音楽やオペラに触れる機会のない層にも気軽に知っていただけたり、コメント欄などを通じて視聴者同士のコミュニケーションが生まれたりするところです。ライブがベストではあっても、「生の公演じゃないからできない」と考えるのではなく、コロナ禍が収束したら劇場に足を運んでいただけるよう、今はしっかり裾野を広げておく時期なのかなと考えるようになりました。

音楽との出会いについて教えてください。

彌勒

母がクラシック音楽を好きだったり、ジャズが好きな親戚がいたりと、子どものころから多様な音楽に触れる環境だったので、自然と音楽に親しんでいました。中高生時代にはバンド活動をしたり、自作曲のコンクールで賞をもらったり、音楽漬けの日々でした。当時、ファンクミュージックやジャズトランペット奏者の日野皓正さんの影響で管楽器を始め、高校の吹奏楽部に入部しましたが、目標だった全国大会に出場できなかった悔しい思い出があります。このとき、「教員になって吹奏楽部の顧問として母 校を全国大会で優勝させたい」と思ったことが、千葉 大学の教育学部に進学する理由になりました。千葉大学で教職を取り、大学院で教育学の修士を取りましたが、その後は東京藝術大学に入学し、結局は歌手になったので、母校の吹奏楽部を優勝させるという夢は果たせなかったのですが(笑)。

人生に無駄なことはないだから好きなことに挑戦してほしい

千葉大学時代の思い出をお聞かせください。

彌勒

日本の伝統文化を研究する授業の一環で歌舞伎を見て衝撃を受けました。授業の名目で毎日のように歌舞伎座に通い、一時は歌舞伎役者になりたいとまで思ったこともあります。歌舞伎は世襲や名跡の世界なので断念しましたが、表現者になりたいと思ったのはそれからです。その後、偶然テレビで過去のイタリア歌劇団の映像を見る機会があり、クラシックやオペラの演者を目指すきっかけになりました。サークルは、少林寺拳法部に所属していました。格闘技や武道というのは、人体の使い方を重視するので、声を楽器にする歌手という仕事にも役立っています。

最後に、学生へのメッセージをお願いします。

彌勒

私がこれまでの経験からはっきりといえるのは、人生に無駄なことなどないということです。実をいうと、東京藝術大学への進学を決めたとき、千葉大学での学生生活が無駄だったのではないかと悩んだことがあります。けれども、今振り返ると決してそんなことはないんです。教育学部ではクラシック音楽を体系的に学べましたし、サークルでの武道の経験も呼吸法や体の使い方に生きています。歌舞伎にハマった経験もそうです。オペラの演出をする際にも参考になりますし、歌舞伎、能、オペラのコラボ公演『源氏物語』では、歌舞伎好きを公言していた私に目を留めていただき、出演する機会を得ることができました。皆さんも自分が 興 味を持ったことにはどんどん挑戦して、経験値を高めていってください。

※記事に記載された所属、職名、学年、企業情報などは取材時のものです

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