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数学者と大学生でビールづくり?!話題の「千葉大ビールプロジェクト」に迫る<後編>

※記事に記載された所属、職名、学年、企業情報などは取材時のものです

数学者である理学研究院の萩原学先生が発起人となり2021年から始まった「千葉大ビールプロジェクト」。

前編では同プロジェクトがスタートすることになったきっかけやこれまで開発してきたオリジナルビールについて紹介しましたが、後編となる今回は、萩原先生に加えて実際に参加した竹山公平さん(理学部4年)、伊藤怜さん(法政経学部4年)と一緒に、学生視点でのプロジェクトの魅力や今後の展望などについて語り合っていただきました。

写真左から伊藤さん、萩原先生、竹山さん

「自分たちでビールをつくった」という実感が持てるプロジェクトに

――お二人はなぜ千葉大ビールプロジェクトに参加しようと思ったのですか?

伊藤:先生のTwitter(現X)での呼びかけがきっかけでした。コロナ禍でなかなか大学に行く機会がない中、何かやりたいなと思っていたところで募集の投稿をたまたま見つけて。ビールはそれほど好きではなかったのですが、「ビールに詳しかったらカッコイイな」という軽い気持ちで参加しました。

竹山:私は萩原先生の研究室に所属していたというのもあるのですが、同じ研究室の友人がやりたいと手を挙げたので、自分もやろうと思ったのがきっかけです。それと、これまで炭酸があまり飲めなかったので、飲めるお酒の幅を広げたいなと思ったことも理由の一つです。

当時の活動を振り返る伊藤さん
第4弾プロジェクトについて話す竹山さん

――具体的には、どのような取り組みをするのでしょうか?

萩原:終了した時、学生メンバーが「自分たちでビールをつくった」という実感が持てることを意識し、約半年間のプロジェクトとして構成しました。基本的な活動は月1回の勉強会です。ここでは午前中に、レシピを作るために何が必要か、どのような数値計算を行うといいのかといったビールづくりの基本について学び、その後はお昼を食べながら実際に色々なビールを試飲して、座学だけでなく味わうことで知識がより深まる機会を作りました。

加えて、実際のビールづくりです。第2弾で開発したホップの図を見ながら組み合わせを検討していくのですが、実はこれがすごく難しいんです。ビールを作る過程でホップを入れるタイミングは7回ほどあるのですが、どのタイミングで、どのホップをどのくらい入れるかによって味がガラッと変わってしまうんです。そこで、メンバーが中心となってその分量やよりよい組み合わせを調べたり、ディスカッションをしたりしながら最終的なレシピを開発していきました。

勉強会の様子

「このメンバーでないとできない」オリジナルビール

――伊藤さんは第2弾、第3弾に参加されたんですよね?

伊藤:はい、私が取り組んだのは「数学ビール」です。第2弾では図を見ながらチャートをたどってホップの組み合わせを考えるくらいだったのですが、第3弾ではより積極的に関わっていきました。第3弾は「初めてビールを飲む人でも楽しめる味わい」がコンセプトで、そのために参考になるようなビールを色々と試飲したところ、とても飲みやすくて、一口目にぶどうの果実感を感じるビールに出会ったんです。そこで、このようなイメージのビールを開発しようということになりました。

その後、このような味を表現するためにはどのようなホップを使えばいいのかを調べてみたり、組み合わせやバランスを相談したりながら「こんなビールを目指す」というプレゼンテーションをしました。

萩原:第3弾では第2弾からの継続メンバーが多かったので、より深い取り組みができました。具体的には麦芽(モルト)、水・イースト、ホップの3グループに分けて、各回それぞれの班に宿題を出しながら、よりよいバランスやタイムスケジュールなどを考えてもらい、最終的なレシピに向けて議論を深めていきました。実は第3弾までは試作する環境がなかったので、徹底的なリサーチとディスカッションでカバーしていったんです。

メンバーで議論を重ねてレシピを開発した
仕込みの様子

――竹山さんが参加されたのは、第4弾の「緑茶ビール」ですね。

竹山:はい。最初は、苦さか甘さか、どちらの方がビールに合うのかという話し合いからスタートしました。実際は色々と試飲をしながら、「あっ!これはいい」「これは違う」というのがメインだったんですけど(笑)、緑茶を混ぜること自体が特殊だったので、どのような味になるのかという話し合いはかなりじっくりと行いました。

第4弾では試作ができるようになったのですが、粉茶はスプーン1杯の差でビールの味が全く変わるんです。これはとてもおもしろい経験でした。

原材料を正確に軽量
完成した緑茶ビール

萩原:学生の意見がしっかり反映されているのがこのプロジェクトの特徴です。最終的には「このメンバーでないとこの味を出せない」という形になるんですよね。

第4弾 緑茶ビール仕込み後のメンバー集合写真

――初めてのビールづくりにもかかわらず、自分たちの意見が色濃く反映された取り組みとなったんですね。お二人は実際に参加してみていかがでしたか

伊藤:私自身、理系分野には苦手意識があったのですが「意外と数学は生活の中に溶け込んでいるんだな」という新しい学びがあったのはとても良かったです。また、活動以外にもメンバーでさまざまなクラフトビールを取り寄せて試飲もしました。最初は「おいしいね」くらいだった意見が、最後の方は「これ、何のホップ使っているんだろうね?」というマニアックな会話になり、このプロジェクトを通じてビールがとても好きになったので卒論もビール業界をテーマにしてしまいました(笑)。

みんなと一つのものを一緒に作っていくという経験ができたのはすごく良かったです。プロジェクトを通じて友達の輪も広がりました。

竹山:シンプルにお酒の作り方を学べたのは良かったなと思います。あと、実は自分の母親がクラフトビールを色々と取り寄せて飲むのが好きだったようで、実家に帰った時に「これおいしいね」といった共通の話題ができたのも良かったです。ちなみに、千葉のクラフトビールが飲めるお店で偶然に母親と鉢合わせした時はびっくりしました(笑)。

萩原:いい企画ですよね。このプロジェクトはみなさんの人生をいい方向に持っていけるんじゃないかなと自負しています(笑)。就職活動の面接でも、ものすごくウケがいいらしいです。

ビールという題材を通じて、「知の発信」を目指す

――お二人の話からも楽しさが伝わってきますね!それでは千葉大ビールプロジェクトの今後の展望について教えてください。

萩原:大きくは二つあります。まず一つ目は、千葉大学内でビールを製造できるようにすることです。学内で設備を整え、企業などとの共同研究のような形で進めていき、近いうちに商品化に繋げていきたいと考えています。

もう一つは少し大きな話になってしまうのですが、「知の発信拠点」としていくこと。言い換えると、大学というアカデミアの場を閉じずに、周囲に解放していくようなイメージです。例えば、各先生が持っている特許などを技術に活用したビールを作れば、その技術に関する情報発信になりますし、文学作品の中に出てくるようなお酒を再現して「文学ビール」のようなものを開発するのもおもしろいですよね。ゆくゆくは各学部のビールなども開発してみたいです。

解放するのは学内だけではありません。例えば近隣の方を対象にした生涯学習のような場を作ったり、店舗などと協力してスタンプラリーのような町おこしイベントを企画したりすることもできると考えています。

このように、ビールという題材によって、アカデミアが開かれていくのではないかと思っています。

――ありがとうございます。最後にメッセージをお願いします。

萩原先生、伊藤さん、竹山さん、ありがとうございました!

※記事に記載された所属、職名、学年、企業情報などは取材時のものです

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