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キャンパス周辺は昆虫の宝庫!研究室が開催した小学生向け「夏の昆虫教室」レポート

※記事に記載された所属、職名、学年、企業情報などは取材時のものです

カブトムシ、クワガタ、カマキリ、バッタ…。子どものころ、森や公園を駆け回って昆虫を捕まえた経験がある方も多いのではないでしょうか?今回は千葉大学・松戸キャンパス内で実施されている地域の子どもたちに大人気の「夏休み昆虫教室」について、主催の大学院園芸学研究院・応用昆虫学研究室の野村昌史教授、藤田奈那さん(園芸学部4年)、武藤悠陽さん(大学院園芸学研究科1年)、橋本悠平さん(大学院園芸学研究科2年)にお話を伺いました。昆虫を採るだけではなく、専門家から直接昆虫に関する知識について学べる教室の魅力をたっぷりとお届けします!

左から武藤さん、橋本さん、野村教授、藤田さん

小さいうちから身近な昆虫に触れる機会を増やすことで、昆虫学の裾野を広げたい

――「夏休み昆虫教室」を開催されることになったきっかけを教えてください

野村教授(以下敬称略):「夏休み昆虫教室」は20年ほど前からコロナ期間中を除き毎年行っています。始めたきっかけは、昆虫学の裾野を広げたいという思いからでした。当時はムシキングというゲームが流行しており、昆虫に対する注目度は比較的ありましたが、その影響からか海外のカブトムシばかりに人気が集まってしまっているという状況でした。

一方で公園に行ってみると、虫を見た親御さんが「キャー!」と言って逃げているようなシーンをよく見ました。しかも、お子さんも一緒に怯えていて…。そのような経験から、小さい頃から身近な昆虫に触れる機会がもっとあった方がいいのではないかと考え、教室を開催することにしました。

――確かに、虫を怖がってしまうお子さんは昔より多いかもしれませんね…。学生さんの子ども時代はどうでしたか?

藤田さん(以下敬称略):私は北関東出身で周囲に虫が多い環境だったので、小学校時代はチョウのさなぎを育てたり、山に祖父と一緒にカブトムシやクワガタを取りに行ったりするなど、昆虫に対してそれほど苦手意識はありませんでした。ですが、バッタやカマキリなどはちょっと苦手な種類もあるので、虫嫌いなお子さんの気持ちも少しわかります(笑)。

橋本さん(以下敬称略):僕も比較的田舎の方出身だったこともあって、生き物全般がとても好きでした。ただ周りがみんな好きだったというわけでもなく、ゲームやスポーツなどに熱中している人も多かったです。高校は都市部の方にある学校だったのですが、そこでは虫が好きだという人はあまりいない印象でした。

子どもはもちろん、大人にも人気の企画も

――ありがとうございます。それでは昆虫教室の内容について教えてください。

野村:毎年8月の第2土曜に午前の部・午後の部と開催していて、対象は小学生以上、親子で参加していただきます。まずは教室で私から昆虫をテーマとした座学を行い、その後園芸学部のキャンパス内を回って参加者と研究室のメンバーが一緒になって昆虫採集をします。最後は教室に戻り、学生たちによる「昆虫クイズ」に参加していただくという流れになります。
今年の座学では「昆虫の争い」をテーマにお話ししました。昆虫同士が戦っている動画なども紹介したこともあってか、子どもからの反応は非常に良かったですね。ちなみに昨年は「実は今、昆虫が世界で減っている?」というテーマでしたが、これは子どもより大人の方に人気がありました。

余談ですが、休日に公園に行って虫の写真を撮っていると、「何を撮っているんですか?」と多くの大人に声をかけられるんです。けっこう大人の皆さんもまだまだ昆虫に興味があるんですね。昆虫教室での大人の反応も踏まえると「大人の昆虫教室」というものもいずれやってみたいと考えています。

――園芸学部のキャンパス内でも昆虫採集ができるんですね!

武藤さん(以下敬称略):キャンパス内は緑で溢れているので昆虫の宝庫なんです。本当に色々な種類の虫に出会うことができます。昆虫採集の時間が始まると、お子さんはもう一目散にバーっと採りに走って、どんどん持ってきますね。まるでゲームをしているような感覚なのかもしれません(笑)。中でも大きいものや、かっこいいと思われている種類が人気です。バッタでもショウリョウバッタのような大きい種類を捕まえると歓声が湧きますし、カマキリもかなり人気があります。

橋本:また、当日採集が難しい、もしくは人気のあるカブトムシやクワガタ、カマキリなどは私が飼っているものを連れてきたり、事前に採集したりして教室に展示します。飼っているものはそのままではあまり見せられる状態ではないので、新しいケースに変えて、よく見えるように潜らない程度に土を敷くなど、できるだけ工夫してより見やすい環境を整えるようにしています。

研究室では子どもたちが観察しやすいように開催前から準備を進めています。
事前準備のおかげで子どもたちも人気の昆虫に夢中です!

――昆虫教室に関わってみての感想を教えてください。

藤田:やはり虫に関わる研究をしているので、虫を好きな子がたくさんいるのを見るだけでとても嬉しくなります。また、参加者の中にはすごく詳しいお子さんもいるんです。私よりも色々と知っているので、逆に教えられることもあります。

武藤: 僕は出身が田舎なので自然が周りにありましたが、東京に近く自然が少ない環境でも、このように多くのお子さんが昆虫採集を楽しんでいる姿を見ると、自分自身にとっても研究のモチベーションにつながります。僕は2回参加しているのですが、昨年に続いて来てくれた子もいて、まだ好きでいてくれたんだなと思うと嬉しくなりますし、そういったお子さんがもっと虫が好きになるようサポートしたいと思います。

橋本:参加した親御さんの中には、子どもは虫がすごく好きなのに、自身があまり虫について詳しくなく、子どもに教えてあげられないという理由で参加されている方もいます。お子さんのやりたいことをご家族が支援したいという気持ちが伝わってくるのでとても印象的でした。

昆虫教室での子どもたちとの交流は学生の皆さんにとっても貴重な機会になっているようです。

――10月26日・27日に開催する松戸キャンパスの「戸定祭とじょうさい(大学祭)」ではどのようなことを企画していますか?

野村:昆虫の展示とクイズの実施がメインとなります。展示は全て研究室のメンバーで採集したもので、20〜30箱とかなり種類も多く、壮観です。

橋本:クイズは研究室のメンバーで作って貼り出すのですが、かなりの自信作で、研究室のプライドをかけて作っています。難問もあるので、満点を取れる人が毎年一桁いるかいないかといった状況です(笑)。

野村:過去には昆虫博士だと思っていたのに満点取れなかった…といって泣き出してしまうお子さんもいました(笑)。

昨年度開催した際の準備の様子。
ハイレベルなクイズに挑戦できます!

種類が多く、形態や行動も特徴的な昆虫は学びの尽きない魅力的な学問

――ありがとうございます。それでは最後に昆虫の魅力について教えてください。

藤田:「種類が多い」ということに魅力を感じています。数が多いからこそ勉強するのも大変ではありますが、珍しかったり、身体や行動が特徴的だったりする昆虫も多くいます。総じて、昆虫から学ぶことがたくさんあって魅力的ですね。

武藤:昆虫はあまり知能が高くないのですが、今まで残っている種類は歴史の中で進化を何回も繰り返して、どんどん洗練されてきているというところに魅力を感じています。形態も合理的になっていったり、その環境に適合する生存戦略を取ったりと、種それぞれの生き方を見ていると、学ばせてもらうことが尽きないんです。

橋本:昆虫の最大の魅力は身近な生き物だというところだと思います。こういう環境が好きなのかな、この虫とこの虫はここが違うな、など日々の生活の中でも虫目線で見て、考えて楽しめるのがとても魅力的です。例えば、荒れ地は人間から見ると良くないイメージですが、しゃがみ込んでみると色んな虫がいるんですね。人間からしたらマイナスなものでも、虫の生息地となり、その虫を食べる鳥なども含め、生態系を守るには大切な場所になります。そういった視点は都市開発などをする上でも必要なのではないかと感じています。

野村:この年になってもわからないことが多いですし、興味があれば色々なことをまだまだ追及し続けられる分野だと思うと、興味は尽きないですよね。そういうことを若い人にもどんどん還元していきたいし、サポートしたいと考えています。そういった意味でも、今回ご紹介した昆虫教室のように大学生以外の子どもたちにも教えてあげられる機会というのはとても大切な機会です。最近、子どもの頃に昆虫教室に参加したお子さんが大学院に入学して研究してくれたんです。こうやって実際に昆虫教室をきっかけに興味を持ち続けていただけたのはとても嬉しいことですし、今後もそういう方が増えてくれることを願って続けていきたいですね。

インタビュー中、野村教授と学生の皆さんの仲の良さがすごく印象的でした!これからのお取り組みも応援しています!

野村教授の所属している研究室の取り組みや、野村教授が撮影した写真は下記のホームページで紹介されています。是非ご覧ください!

千葉大学園芸学部応用昆虫学研究室 www.insects-of-tojo.com/insect/

野村教授の撮影した写真は以下のサイトで見られます。
戸定の昆虫 www.insects-of-tojo.com/

園芸学部のInstagramでも、応用昆虫学研究室の様子をアップしていきます。気になった方は、ぜひフォローしてみてください!
Instagramアカウント:@Matsudo_Campus_Chiba

※記事に記載された所属、職名、学年、企業情報などは取材時のものです

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