千葉大学はグローバル人材の育成を目指して、2020年度から「千葉大学グローバル人材育成 ‶ENGINE”」を開始し、学生の留学や英語教育に力を入れています。海外からの留学生受け入れも積極的に行っており、年間70か国から1,700人以上の留学生が来日しています。
今回は千葉大学に留学生として来日し、研究に励んでいるLINGLINGさん(現予防医学センター特任研究員)、フィトリアさん(人文公共学府博士後期課程1年)に、千葉大学を選んだきっかけや魅力、そして千葉県の印象について伺いました。
「母国で学んでいたテーマを深掘りしたい」をきっかけに千葉大学へ
――まずは自己紹介をお願いします。
LINGLINGさん(以下、敬称略):中国の内モンゴル自治区から来たLINGLINGです。私はもともと母国の大学でモンゴル医学を学んでいたのですが、実習でリハビリをメインとしたインターンシップに参加する中で、リハビリの研究がより進んでいる日本で詳しく学びたいと思い、11年前に来日しました。
フィトリアさん(以下、敬称略):インドネシアから来たフィトリアです。私は母国の大学の日本語学科を卒業後、技能実習生を対象とした日本語教師として働いていました。生徒と話す中で、技能実習生として働くことにはさまざまなハードルがあることを知り、それらを解決する方法を見つけ出したいという思いが芽生え、日本に来ることを決めました。
――それぞれご自身が学ばれていたこと、接していたことがきっかけで来日されたのですね。日本ではどのようなことを学ばれているのですか?
LINGLING:来日直後、日本語学校に通いながらリハビリについて学べる大学を探していたところ、千葉大学の近藤克則教授の研究室を見つけ、すぐに連絡をしました。近藤先生にお会いしてお話するなかで、予防医学という分野があることを知りました。リハビリはすでに病気や怪我になってしまっている方が対象ですが、予防医学の考え方が浸透すれば、そもそも病気になる人が減り、リハビリをしなくても済む人が増えるという考え方に共感し、この分野を研究することを決めたんです。8年間留学生として千葉大学で学び、今では千葉大学予防医学センターで研究者として勤務しています。
フィトリア:私は移民研究を行っていて、主に技能実習生の介護士のキャリア選択について学んでいます。技能実習生は技能の習得と移転が主な目的になりますが、仮に技能を習得しても、母国での介護士という仕事は、概念ややり方などが日本と異なり、ナースとして学歴がないと働くのが難しいんです。また、日本での滞在期間が最長5年という制限があり、日本で資格を取ることができないと、そのまま就職することも難しいという課題があります。技能実習生の介護士が国家試験のサポートなどを受ける手段は限られており、私はこのような方々がどのように適切なキャリア選択ができるかについて、修士課程から研究しています。たとえ難しい状況であっても、なぜ日本で介護士として働き続けるのかが、現在の研究の主要なテーマです。
――お二人とも当初の想いを持ちながら、それを発展させるための研究を行っているのですね。日本の滞在期間中の取り組みで印象に残っているものはありますか?
LINGLING:予防医学センターの授業の一環で参加した海外研修です。予防医学を中心とした方が集まる授業に参加し、「One Health」という考え方を学びました。これはヒト、動物、環境の健康を1つのものとみなし、守っていくというものです。自然のなかに生きている全てがうまく連携するという考え方は、大学で学んでいたモンゴル医学の理念と一致していたことが、私にとってとても新鮮で印象深い経験となりました。
あとは修士課程1年生の時に大学からの案内で参加した、震災の被災地、福島県双葉郡富岡町の復興ボランティアですね。私以外は全員日本人という環境だったのですが、日本人の皆さんと地域の復興についてディスカッションしたり、お祭りに参加して地元の方々とコミュニケーションをとったりするなど、非常に有意義な時間を過ごすことができました。
フィトリア:私は日本に来てすぐに色々なコミュニティ活動に取り組みました。修士2年生の時には、外国人の視点を県施策に活かすことを目的とした「チーバくんグローバルパートナーズ」のメンバーに選ばれ、さまざまな意見交換やサポート活動を行いました。
昨年、大学ではインドネシア人コミュニティの副会長になり、新たに留学してきた学生さんとご家族に向けて、大学や区役所、病院等の手続きのサポート活動を行っています。このコミュニティで大学祭にも参加して、インドネシアの焼き鳥「サテ・アヤム」の屋台を出店しました。日本の学生さんにも大好評でしたよ!
都会と自然のバランス、フレンドリーな人柄。お二人から見る千葉県、千葉大学の魅力
――日本と母国で文化の違いを感じることはありますか?
フィトリア:一番は日本語が「ハイコンテクスト」な言語であるということですね。ニュアンスや空気感を読み取ることが難しい。「行けたら行くね」はどっち?って悩みます(笑)。でもそれも文化の違いなので、私もできるだけ学んでいこうと思っています。
あと、日本人はとにかく歩きますよね!インドネシアではほんの少しの距離でもバイクを使ってしまいます。母国では歩いている人を見ると「かわいそう」と思ってしまう時もありますが、日本だと「健康的だね!」と思われます。歩くことに対する印象が全く違うのには驚きました。
LINGLING:私は「友だち」の概念が違うなと感じました。日本では友だちというと家族のような存在というか、しっかりと「つながっている」印象がありますが、私の国では知り合いになってしまえば友だち、という感覚です。それこそ大学の同級生はみんな友だちといえます。その線引きの考え方は初め少し戸惑いました。
――千葉大生の印象についても教えてください。
フィトリア:私はイングリッシュハウスのアシスタントもやっていたのですが、皆さんとにかくフレンドリーですし、周りの人をサポートするという意識を持った人が多いですね。研究室のメンバーも「必要なことがあればいつでも教えてね」と言ってくれますし、プレッシャーなくのびのびと楽しむことができています。
あと、大学の仲間たちと居酒屋に行くのが大好きです!私は宗教の都合上飲酒はできないのですが、大勢で集まってワイワイと楽しむ環境が好きで、誘われると思わず行ってしまいます(笑)。
――千葉県の印象はいかがですか?
LINGLING:東京は人が多くて混雑していますが、千葉はほどよく都会と地方の要素が混ざっていてとても好きです。外国人観光客がどんどん増えていますが、東京はよく知られているので、皆さん新しい観光地を求めていると思います。千葉県には魅力的な場所がたくさんあるので、海外の方向けにもっとPRできると嬉しいです!
ちなみに私は鋸山(のこぎりやま)がとても好きです。鬱蒼とした森のなかを歩きながら、頂上に着くと一気に視界が開けて絶景が楽しめるんです。毎年のように行っていますが、本当にすばらしい観光地だと思います。
フィトリア:私は海派で、鴨川や館山といった南房総エリアがとても好きです。また小湊鉄道から菜の花を眺めたり、ローカル線の旅ができたりするのも魅力的ですね。でも千葉県の観光地は交通の便があまり良くないので、もう少し電車やバスの本数が増えてほしいな…と思います(笑)
――ありがとうございます!それでは最後に、千葉大学を目指す国内外の学生さんに向けてメッセージをお願いします。
LINGLING:千葉大学は、留学生に対する制度が良いと思っています。自分は大学院生のとき、授業料を免除されたり、奨学金をもらったりして、自分の勉強に集中することができました。千葉大学は世界各地から留学生が来ているのが特徴的で、日本人の学生、留学生問わずさまざまな文化を学べる環境だと感じています。
また、千葉大学は、海外の学校との連携が密に行われていることが魅力ですね。自分もその機会で海外に行ったり、また日本に来た大学生たちとも交流したりすることができました。
フィトリア:千葉大学には「つねに、より高きものをめざして」という理念がありますが、私も来日してきた時と比べ、色々な面でポジティブに成長できていることを実感しています。初めは日本語が話せない留学生もたくさんいますが、私たちもインドネシア人コミュニティでの活動等を通じてしっかりサポートしていきますので、ぜひ千葉大を目指してほしいです。
あと日本人の学生さんにとっては、「全員留学」という機会はとても良いですよね。私も実感していますが、異文化に触れることでより多くの経験を積めると思います。不安に感じることもあると思いますが、ぜひチャレンジしてみてください!