CHIBA UNIVERSITY

SPECIAL

YOKOTE VISION の実現に向けて ~動き出したJ-PEAKS 、変革に挑む千葉大学~

※記事に記載された所属、職名、学年、企業情報などは取材時のものです

2025年4月、横手学長が千葉大学の中長期的な大学ビジョン「YOKOTE VISION」を発表しました。その実現を力強くけん引しているのが、2024年に本学での取り組みがスタートした地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(J-PEAKS)です。全学的に取り組む大学改革や研究力強化などとともに、横手学長、中島副学長、山本学長特別補佐による鼎談を通してご紹介します。

【写真左】中島 裕史(なかじま・ひろし)【写真中央】横手 幸太郎(よこて・こうたろう)【写真右】山本 智久(やまもと・ともひさ)

【写真左】
中島 裕史(なかじま・ひろし)
副学長(研究・地域中核担当)、大学院医学研究院 教授
千葉大学病院 副病院長(学術・基礎連携・人事担当)
学術研究・イノベーション推進機構(IMO)副機構長
未来医療教育研究機構 機構長

【写真中央】
横手 幸太郎(よこて・こうたろう)
千葉大学 学長

【写真右】
山本 智久(やまもと・ともひさ)
学長特別補佐(イノベーション推進)
学術研究・イノベーション推進機構(IMO)総括URA/イノベーション・マネジメント教授
未来医療教育研究機構 副機構長
株式会社千葉大学コネクト 代表取締役社長

5つの柱で中長期的な方向性を示した大学ビジョン

横手
今年4月、「YOKOTE VISION」と題した大学ビジョン「生命、環境、そして社会へ。知の共鳴で未来を拓く千葉大学」を策定しました。「つねに、より高きものをめざして」の理念に基づき、「研究」「教育」「社会貢献」「経営」「信頼」の5つの柱で中長期的な方向性を示しています。また、ビジョン実現に向けた行動指針として、「『より良く生きる』に貢献しよう」「イノベーションを楽しもう」「大学の基盤を強化しよう」の3項目を掲げています。教職員はもちろん、学生の皆さんと共に、ぜひ一丸となって実践していきたいと思っています。

YOKOTE VISION 生命、環境、そして社会へ。知の共鳴で未来を拓く千葉大学

1 「より良く生きる」に貢献しよう
・「生命/いのち」「環境」「社会」をキーワードに、自身の専門性を活かして、変化を恐れず、新たな領域の開拓にチャレンジする。
・地域社会やグローバル社会に活動の成果を還元し、個性や才能を発揮して活躍する人材を輩出することで、人々の「より良く生きる」に貢献する。

2 イノベーションを楽しもう
・企業・団体、地域・世界の人々との共創を先導し、互いの知を高め合いながら、進取の精神でイノベーションを創出する。
・学内においても、異なる視点や強みを尊重しつつ、専門性や職種の枠を越えて、対話と協働を促進していく。

3 大学の基盤を強化しよう
・多様なステークホルダーの声を活かし、経営体制を強化する。
・学生・教職員が生き生きと活躍できる環境を整備する。
・大学のリソースを最大限活用し、世界に存在意義を示す。
・社会に開かれた大学として、千葉大学ブランドの向上に努める。

中島
5つの柱を打ち出したことで大学の進むべき方向が明確になりましたね。

横手
大学の使命は本来、「教育」と「研究」、そしてそこから生み出される「社会貢献」の3つですが、私はここに「経営」と「信頼」を加えて、5つの柱で舵取りを進めたいと考えています。「経営」は、財務的なことだけでなく、人材マネジメントや環境づくりも大変重要です。そして、本学が社会から「信頼」されることで、教職員と学生のモチベーションや誇りにつながると考えています。

山本
現在、千葉大学が取り組むJ-PEAKSは、地域の中核大学や特定分野の研究に強みを持つ大学を対象に、強みや特色を活かした戦略的経営や環境整備を文部科学省と日本学術振興会が支援する事業です。通常の研究助成金とは異なり、経営や環境整備も包括するという意味でビジョンとも通底するものがあると感じています。

横手
大学は今、変革の時を迎えています。本学も、単なる教育・研究機関にとどまらず、未来社会の羅針盤となっていきたい。そんな想いから、これからの世界で大切なこと、千葉大学が注力すべき強み、学生や教職員が目指す姿などを熟考し、ビジョンをつくりました。これまで「飛び入学」制度、全員留学の必修化、グローバル人材育成 “ENGINE”プランなど、先進的な取り組みをしてきたように、これからもJ-PEAKSを軸に、社会・世界とつながる“知”の拠点として挑戦を続けていきたいと思います。

学生や教職員が本学に誇りを持ち、高みを目指してチャレンジできる大学を創り上げていきたいです。

J-PEAKSで注力するイノベーション・エコシステムの構築

横手
J-PEAKSの具体的な取り組みについて、山本先生から紹介していただけますか。

山本
大きく分類すると、新しい組織の立ち上げが3つ、全学をまたいだ取り組みが3つあります。まずは新組織ですが、1つめはデータ活用の先端研究を支援する「データサイエンスコア(DSC)」、2つめは医学の基礎研究から臨床までを一貫してサポートする「ヒト免疫疾患治療研究・開発センター(cCHID)」、そして3つめは動物実験の高度化や代替法の確立を目指す「次世代in vivo研究探索センター(cNIVR)」が設置されました。

横手
生命科学系の研究は本学が得意とするところですし、基礎研究から臨床までを包摂した環境整備が進めば、今後の創薬にもつながる可能性があるので、ここに注力できることは本学にとっても重要な意義があります。また、データサイエンスについては、2024年に本学11番目の学部として情報・データサイエンス学部を設置したこととリンクします。データサイエンスは、これからの社会で文系理系を問わず確実に必要となるので、今後の領域横断的な研究にも寄与しそうですね。

中島
私も医学研究院に所属する者としてcCHIDには大きな期待があります。一口に創薬といっても、製薬会社との共同研究や実際の創薬を進めるには一定レベルのフェーズまでは研究者が自力で進める必要があります。学内で基礎研究から臨床までをサポートするシステムが整えば可能性も広がりますし、国内外問わず優秀な若手研究者から選ばれる大学になると思います。

山本
続いて全学をまたいだ取り組みですが、1つめは本学を核としたイノベーション・エコシステムの構築、2つめが国内外の大学や研究機関との連携、3つめは若手研究者の支援体制の強化です。

中島
1つめのイノベーション・エコシステムの構築は非常に広範囲な取り組みです。そして、このエコシステムの新しいピースとして活躍を期待されているのが、山本先生が代表取締役社長を務める子会社の千葉大学コネクトですね。

山本
本学の産学連携を次のステージに進めるという経営判断のもと、お任せいただくことになりました。これまでは、企業から声がかかり、研究者自身が対応していましたが、今後は千葉大学コネクトが研究成果を企業に提案したり、各種手続きや契約など事務的なサポートもしますので、研究者はより研究に集中できるようになります。学生にとっても、企業と共同で行う実践的なプロジェクトを通じて自らのスキルが上がるというメリットがあります。

千葉大学初の100%子会社の株式会社千葉大学コネクトのメンバー
千葉大学初の100%子会社の株式会社千葉大学コネクトのメンバー

横手
産学連携は「学術研究・イノベーション推進機構(IMO)」も推進していますね。コネクトはどんな活動を始めているのでしょう?

山本
スタッフがいろいろな場所に出向いてネットワークづくりに励んでいます。企業はもちろんですが、自治体、金融機関やベンチャーキャピタルとも話をして、どんな経路でも研究と社会をつなぐことができるパイプ役として動いています。また、大学内での研究開発を希望する企業の受け入れをサポートしたり、社内リカレント講習に大学教員を招きたいといった企業の窓口を務めたり、様々な形で産学連携のハブになることがコネクトの役割だと思っています。

千葉大学が研究力を高め、日本のPEAKS(山脈)の一つになる…そんな未来にワクワクします。

アントレプレナーシップセンター、柏の葉の新拠点「BIH」の活用に期待

横手
今年5月に柏の葉キャンパスに設置したBIH(Biohealth open Innovation Hub)もエコシステムの一つの要素ですね。

山本
先ほど触れた企業の受け入れを行っているのがBIHです。レンタルラボ機能があって、企業が社内で実際の開発に入る前の研究に取り組めるようになっています。

中島
BIHには植物工場もあり、本学独自のコメ型ワクチン「ムコライス」の生産も行われていますし、農業の研究開発をしたい企業に活用いただきたいですね。

山本
レンタルラボへの入居は順調に進んでいます。将来的には各キャンパスの既存施設も活用して、多くの企業のプロジェクトを形にしていければと思います。

柏の葉キャンパスのBIH(上)には、飲むワクチン「ムコライス」を生産する植物工場(下)やレンタルラボなどがある
柏の葉キャンパスのBIH(上)には、飲むワクチン「ムコライス」を生産する植物工場(下)やレンタルラボなどがある

横手
今年4月に設立された本学アントレプレナーシップセンターもJ-PEAKSのエコシステム構築の取り組みの一環ですね。

山本
実際のスタートアップ支援については学内の支援組織「スタートアップ・ラボ」が引き続き担当し、アントレプレナーシップセンターでは起業家教育を担当しています。起業家教育というのは、起業だけが目的なのではなく、体験を通して考え方を養い価値観を築いていくことも重要です。起業家精神、まさにアントレプレナーシップを持った人材は世の中で求められているので、育成の面でも重要な位置づけだと思っています。

横手
スタートアップ・ラボもすでに多くの実績がありますし、実践と教育の両輪でアントレプレナーシップを伸ばしていけるのは良い取り組みだと思います。

カナダの大学と開催したアントレプレナーシップの教育プログラムでは、学生たちが万博会場で発表した
カナダの大学と開催したアントレプレナーシップの教育プログラムでは、学生たちが万博会場で発表した

リサーチアドミニストレーター(URA)の増員などで研究力の強化へ

横手
若手研究者の育成や支援体制も充実させていきたいですね。

中島
リサーチアドミニストレーター(URA)が研究支援や研究活動の戦略立案などを担当するマネジメント専門職として活躍しています。産学連携はもちろん、知的財産や研究提案など、研究と社会ニーズを正しく評価したうえで研究者と社会を橋渡しすることが彼らの役割ですが、サポート役から徐々に意思決定の議論にも参加するようになっています。URAが柔軟に活躍してくれることでスムーズな情報共有が行われ、研究者と事務担当者との連携も強くなってきたと感じています。

山本
J-PEAKSに採択されてから、URAを増員でき、仕事の幅も広がっています。現在は今後に向けて、URAの育成やキャリアアップ、事務職員からURAへキャリア転換できるなどの仕組みづくりを進めているところです。プレーヤーである研究者だけでなく、URAや学生、職員がその研究やプロジェクトが社会に届く面白さを肌で感じてほしいです。みんなが一丸となって一つの研究そして本学を高めあっていけたらと強く感じています。

新たなシーズを伸ばして世界に冠たる大学へ

中島
J-PEAKSは研究大学の強化を国が後押しするもので、ここに採択されたということはそれだけ大きな役割を期待されているということです。千葉大学が大きく変わり羽ばたこうとしていることを、学内外の様々な方に知っていただくことが、本学のブランド力向上にもなりますし、ビジョンの「経営」や「信頼」の実現にもつながっていくと思います。

山本
J-PEAKSの使命は、10年後も成長する大学として学生、研究者、社会から選ばれる存在であり続けるための循環の仕組みづくりだと思っています。存在感のある研究をすれば社会実装も実現するし、中島先生がおっしゃったブランド力が向上すれば、学生も研究者も集まってきます。本学は11学部を擁する総合大学なので、1つの研究から新たなシーズやイノベーションが生まれる可能性も高いと思います。こうしたエコシステムづくりに携われてうれしく思っています。

イノベーションの創出の場として選ばれる大学になる。これが10年後の目標です。

中島
J-PEAKSは、採択された25の大学が盛んに相互視察や情報共有を行っていますね。ただ競うだけでなく、優れた点を共有して日本全体の研究力を高め、千葉大学をはじめ、いくつものPEAKS(山脈)を作っていくことにワクワクしています。

横手
本学には原石がまだまだ眠っていると思います。 11学部を横断的につなぐことで新たな化学反応を起こしたり、J-PEAKSの活動を通じて新しい種を見つけて伸ばしたりしていきたいと改めて感じました。千葉大学は昨年75周年を迎えましたが、次の100年に向けて、中心にあるのは「人」です。学生も教職員も、一人一人が自らの可能性を存分に発揮し、生命を輝かせ、より良く生きる環境を整えることが、人と社会を豊かにする─ 。そんな千葉大学を皆さまと共に創っていきたいと思います。

※記事に記載された所属、職名、学年、企業情報などは取材時のものです

この記事をシェアする

SPECIAL

HOMEに戻る