千葉大学大学院医学研究院長・医学部長
松原 久裕 教授
千葉大学大学院医学研究院・医学部は、1874年に設立された共立病院を祖とし、何度かの変遷を経て1949年に設置されました。このときに建てられた旧医学部本館は、千葉大学の歴史と共に歩んできた重厚な建築物ですが、老朽化に加え、附属病院との物理的距離が離れていることから、病院に直結した立地で最先端の設備を備えた研究棟を新設し、そこに拠点を移しました。
千葉大学医学部が掲げる「治療学」という概念は、設立以来、地域に根差した治療に貢献してきた伝統から生まれました。新しい研究棟も、この治療学を発展させるための拠点という意味を込めて、「治療学研究棟」と呼称しています。
治療学を推進するために欠かすことのできないのが、基礎と臨床の融合です。附属病院の中央診療棟と渡り廊下でつながったことで、単に移動時間が短縮、効率化されただけでなく、これまで以上に診療と研究のシームレスな連携が可能となりました。教員や学生からも快適に使えるようになったという声をいただいています。
また、関連がある基礎系研究室と臨床系研究室を同フロアに配置するなど、基礎と臨床の人的交流や情報共有がスムーズに行えるよう配慮しました。新たな医療ニーズに応え得る医療人の育成につながるのはもちろん、今後は、臨床の抱える課題を基礎研究で明らかにし、その成果を再び臨床にフィードバックして新たな治療法につなげるといった双方向的な協力体制もより一層進んでいくはずです。
この治療学研究棟を拠点に、新しい治療を世界へ発信していく大学院医学研究院・医学部の今後の発展にご期待ください。
学生へのメッセージ
千葉大生はジェントルだと言われます。いい仕事をするためにコミュニケーション能力は必要なので、今持っている力に、さらに自分が引っ張っていくんだという強い気持ちが加われば、グローバルな舞台で活躍できる人材になれます。千葉大学の研究はトップレベルなので、そこで学んでいるという自覚と誇りを持って日々を過ごしてください。
アクティブ・ラーニング・スペース
南玄関から直接アクセスできる場所に、2つのアクティブ・ラーニング・スペースを設置しました。1つはレイアウトフリーで活発な議論を行える「未来と創造」、もう1つは落ち着いた環境で資料の閲覧や思索を行える「智慧と歴史」。様々な情報との出合いや人的交流を通して、イノベーションを生み出す場になることが期待されています。
解剖実習室とCAL(クリニカルアナトミーラボ)
基礎医学として医学部の授業で使われる解剖実習室は、教員の意見を取り入れながら、最先端の設備を備えた次世代の解剖学教育を可能としています。一方、より臨床医学にフォーカスして研究やトレーニングを行うための施設がCAL(クリニカルアナトミーラボ)。医学系総合研究棟を拠点に、基礎と臨床の両輪で「治療学」を推進しています。
その他の設備
実習室は、基礎医学の実験・実習を行う第1実習室(ウェットラボ)と、顕微鏡とデスクトップPCを備えた第2実習室(ドライラボ)を設置。この他にも、24時間365日利用できるグループ学習室や、医療機器開発のために各種測定機器を備えた実験室など、伝統を踏まえたうえで未来に向かうための教育設備が整えられています。
「治療学」とは?
千葉大学では「治療の理論的背景を明らかにし、その知見に基づいた新規治療法の開発を系統的に研究・実践する学問」と位置付け、その研究推進と人材育成に力を入れています。