CHIBA UNIVERSITY

SPECIAL

中山俊憲新学長に聞く

※記事に記載された所属、職名、学年、企業情報などは取材時のものです

未来の千葉大学はどうなるのか?
グローバル人材の育成や様々な学術研究の推進、千葉大学のブランド力と経営力の強化などについて、中山俊憲新学長にインタビューしました。

学長就任にあたっての想いをお聞かせください

今、学長に就任するにあたって、どうしても避けて通れないのが新型コロナウイルス感染症による社会の変容です。ニューノーマルという言葉も定着してきていますが、教育や研究においても、新しい方法を模索しながら大学を運営していくことになるのは間違いありません。ただ、過去の歴史を振り返ると、100年前にはスペイン風邪がありましたし、日本においては東日本大震災など様々な自然災害を経験してきました。私たちはそうしたピンチを乗り越えて今があるのですから、今回も過剰に悲観的になるのではなく、しっかり対策をしたうえで、新しい教育スタイルの創造に向けて、前向きにチャレンジしていくべきだというのが私の考えです。

また、千葉大学は、国際教養学部の創設や全員留学の実施など、グローバルな人材育成に力を入れていますが、この路線は今後も継承しつつ、社会の変容に合わせた形でさらに強化していきたいと考えています。

これからの千葉大学が果たすべき役割、目指す将来像をお聞かせください

これからの千葉大学が目指すゴールとして、「輝かしい未来を牽引する世界に冠たる千葉大学へ」というキャッチフレーズを打ち出しています。大学の使命は、「教育」「研究」「社会貢献」です。この3つの柱を念頭に置き、グローバルな人材の育成やイノベーティブな研究開発の実現、地域の活性化といった成果を生み出したいと思いますし、そのために学生と教職員が生き生きと活躍できる環境をつくることが、私に求められている役割だと考えています。

具体的にどのような施策に取り組んでいこうと考えていますか?

施策として、「World-leading」「Innovative」「Timeless」「Harmonious」の4つを掲げています。それぞれの頭文字をつなげて「WITH」と呼んでいます。最初の「World-leading」は、世界を牽引できるような研究についての施策です。学問の多様性を尊重しつつ独創性に富んだ学術研究や、社会に変革をもたらすイノベーティブな研究開発を目指します。学生の知的好奇心を満たすような最先端の研究やユニークな研究を行うことで、千葉大学のブランド力も高まりますし、様々な形のイノベーションにもつながっていくと思います。国内外の大学、研究機関、企業などとの連携もさらに進めることで、世界水準の卓越した大学として発展できることを期待しています。

続いて2つめの「Innovative」は、教育における改革と進化を指します。千葉大学では、最高学府にふさわしい優れた学問を学修する過程で、学生が幅広い知識と豊かな知性、高度な専門性を身に付ける機会を得て、最終的にグローバルな舞台で活躍できるような人材に育つことを目指しています。また、ポストコロナ時代に対応した斬新で多様な教育システムの確立と定着を目指します。さらに、大学での教育は研究活動のなかで行う必要があるというのが私の考えで、学生の皆さんには研究を通して課題解決型の人材に育ってほしいと考えています。

3つめの「Timeless」は、長期的展望とのことですが、これは大学運営に関する部分ですね

そうです。2004年に国立大学が法人化されて以降、運営費交付金が段階的に減額されており、国立大学も独自資金を獲得する必要に迫られています。研究費や企業との共同研究など、外部資金の獲得については、徳久前学長時代に産学官連携を活性化する新たな組織が立ち上がり、私もその組織を最大限活用しようと考えています。外部資金の獲得のために重要だと考えているのが発信力の強化です。千葉大学には素晴らしい研究成果がたくさんあるので、学長企画室を設置し、私自身が旗振り役になって大いにアピールしていくつもりです。

そしてもう一点、これからの大学は、金融や資産運用といった経営的視点も必要です。大学の教職員は、そういう面でどうしても力不足なので、学外の専門家を大学の執行部に任命するなど、経営力強化に努めていきます。人件費や設備費をしっかり確保することで、新しい知識や能力を持った教員も雇用でき、永続的に独創的な研究を生むサイクルも構築できると考えています。

最後の「Harmonious」は、調和という意味ですが、多様性を尊重した大学というアカデミア環境を指しています。そのためには、学生だけでなく、全教職員が生き生きと活躍できる環境である必要があります。社会のニーズとして働き方改革が叫ばれるなか、大学も新しいワークスタイルに適応していくべきだと私は考えています。会議のオンライン化の推進など、すぐにできることはいくらでもありますし、効率化で余裕が生まれれば、改善のためのアイデアを検討する時間もつくれます。教職員が適材適所でやりがいを持って活躍し、正しく評価されるような職場環境を充実させたいと思います。

中山学長と千葉大学との最初のご縁はどのようなものでしたか?

大学生のときに、免疫学の多田富雄先生の講演を聞く機会があり、その内容に魅せられたことがきっかけで免疫学研究の道に進んだのですが、この多田先生が千葉大学医学部のご出身でした。徳久前学長も研究者としての専門分野が免疫学ですが、千葉大学は多田先生から連綿と続く国内有数の免疫学の伝統があります。私が免疫学を志した当時、多田先生は東京大学に研究室をお持ちだったので、私も山口大学から東京大学の大学院に進みましたが、海外留学などを経て千葉大学に助教授として赴任し、こうして学長を拝命することになったのは強いご縁を感じます。

助教授として赴任された当時の千葉大学の印象と、現在までの変化をどのように感じていますか

千葉大学は、私が赴任した当時から研究は世界トップレベルの水準だったという印象です。雰囲気も温かく、居心地の良い研究環境だと感じました。最先端研究は競争の世界ではありますが、過度に意識しすぎると安易な結果に飛びついてしまう危険性があります。千葉大学は、都心の大学ほど競争意識が激しくなく、視野を広く持てるので、研究の内容をより意味のあるものにすることを優先できる環境だと感じた記憶があります。

こうした環境は今でも基本的に変化していないと思いますが、優れた教育、研究、社会貢献を実現していくには、社会の変容や最先端の研究の動向に合わせて、組織や体制を変えていく必要も出てくるだろうと予測しています。自分なりのアイデアは準備しているので、学長としてリーダーシップを発揮して取り組んでいきたいですね。

最後に、学生の皆さんへのメッセージをお願いします

学生に対しても教職員に対しても、新しいことにチャレンジする気持ちを持ってほしいと思っています。千葉大学の学生は大きなポテンシャルを持ってはいるのですが、ややおとなしい優等生タイプが多いように感じます。グローバルな舞台で活躍するには、大いなるチャレンジ精神が原動力となるので、自分の得意分野を伸ばすとともに、外に目を向けていろいろなことに挑戦してみてください。幸いなことに、千葉大学では最近、グローバルな視点を持った学生、チャレンジ精神旺盛な学生が増えています。大学は多様な価値観を持った人と交流できる場なので、どんどん刺激を受けることで自分を成長させていってくれれば嬉しく思います。

教員や職員の皆さんについても、各々の専門性を生かしながら全員が生き生きと活躍できる環境をさらに充実させていきます。学生、教員、職員が 「WITH」を合言葉に力を合わせて、「世界に冠たる千葉大学」をつくっていきましょう。

プライベートでは、研究や職務のストレス解消を兼ねてゴルフをたしなむ。1ラウンドで平均約20,000歩あるくため、メタボ対策(悪玉コレステロール値や尿酸値の上昇を抑える)としても有用。写真は、175ヤードを5番アイアンで狙った時の写真。
父親の影響で始めたカメラが趣味。若い頃は6×7(ロクナナ)と呼ばれる大判のフィルムカメラを抱えて撮影旅行に行ったこともある。当時のカメラは思い出の品として防湿庫に保管。最近はデジタルカメラで学内の風景を撮ることも(写真)。

中山 俊憲(なかやま・としのり)

1959年5月20日生

経歴

1984年 3月山口大学医学部卒業
4月東京大学大学院医学系研究科第三基礎医学専攻入学
1988年 3月同修了(医学博士)
6月米国国立癌研究所 客員研究員
1991年 7月東京大学医学部免疫学教室 助手
1995年 4月東京理科大学生命科学研究所 助教授
1998年 4月千葉大学大学院医学研究科 助教授
2001年 4月千葉大学大学院医学研究院 教授
2005年 4月千葉大学バイオメディカル研究センター長併任(2009年3月まで)
2009年 4月千葉大学大学院医学研究院附属動物実験施設長併任(2015年3月まで)
2011年 4月千葉大学医学研究院副研究院長(2015年3月まで)
2012年 1月千葉大学未来医療教育研究センター長併任(2015年3月まで)
2014年 7月千葉大学 副学長
千葉大学未来医療教育研究機構長併任
2015年 4月千葉大学大学院医学研究院長・医学部長
2018年 3月南カリフォルニア大学ケック医学校 客員教授
8月カリフォルニア大学医学部サンディエゴ校 兼任教授
千葉大学サンディエゴ・キャンパス キャンパス長
2021年 4月千葉大学長

学位

医学博士(東京大学)

専門分野

免疫学・アレルギー学

学会活動

日本免疫学会、日本癌学会、日本アレルギー学会、日本がん免疫学会、日本バイオイメージング学会、日本分子生物学会、The American Association ofImmunologists, USA

座右の銘

「全力で走れ」

何かに挑戦するときに、とにかく一度は全力でやってみることが重要だと思います。限界までやることで、自分の限界を知ることができますし、逆に自分が得意なものが何かもわかるからです。私自身、自分が不得手な分野は得意な人に任せ、自分の得意分野を伸ばすことで、成長できたという実感があります。学長としても、個々の課題は適材適所のスタッフを信頼して任せ、私は学長としての責務をしっかりと果たしていきたいと思っています。

※記事に記載された所属、職名、学年、企業情報などは取材時のものです

この記事をシェアする

SPECIAL

HOMEに戻る