CHIBA UNIVERSITY

SPECIAL

自分のキャリアは自分で作り出そう〜変化の大きいこれからの社会で活躍するためには?<前編>

※記事に記載された所属、職名、学年、企業情報などは取材時のものです

世界情勢が大きく動き、国内でもさまざまな変化が起こっている中、社会では男女問わず変化に柔軟に対応し、活躍する人材が求められています。
今回は千葉大学人文科学研究院・ダイバーシティ担当特命理事の米村千代教授を聞き手に、千葉銀行取締役専務執行役員、グループCSO・グループCDTOの淡路睦さんJPモルガン証券株式会社のチーフ株式ストラテジストの西原里江さんに、ご自身が歩んでこられたキャリア、そして日本社会のダイバーシティについて考えていることなど、さまざまなお話を伺いました。

JPモルガン証券株式会社 チーフストラテジスト

日本銀行に入行し、金融、国際関係業務に携わる。国内証券会社を経て、2016年5月にJPモルガン証券に入社、2022年5月にチーフ株式ストラテジストに就任。ロンドン・ビジネス・スクール(LBS)修士。2010-2011年コロンビア・ビジネス・スクール日本経営経済研究所(CJEB)客員研究員。2020年金融審議会「銀行制度のあり方検討」WG専門委員等を務める。東京大学経済学部卒、ロンドンビジネススクール修士。

株式会社千葉銀行 取締役専務執行役員(グループCSO・グループCDTO)

1989年、千葉銀行入行。支店勤務の後、14年間のちばぎん総合研究所への出向を経て帰任、執行役員地方創生部長、執行役員法人営業部長、常務執行役員等を歴任し、2021年から千葉銀行初の生え抜き女性取締役に就任。2023年より現職。
多くの女性が結婚・出産等で退職していく中、仕事を続けるという信念を貫き、夫と二人三脚で仕事と育児を両立。多くの実績を残し、現在は経営戦略全般やリーダー育成、デジタル戦略で活躍している。

国立大学法人 千葉大学 特命理事・副学長

大学院人文科学研究院行動科学コース 教授。専門分野は家族社会学、歴史社会学。現在は特命理事に就任し、千葉大学の教職員が仕事・研究と家庭生活の両立ができるように互いに助け合いながら、キャリア形成していけるように、大学内の持続可能な成長を実践できる環境や仕組みづくりに日々取り組む。

淡路さん(以下、敬称略):私は「1つの会社で長く働き続ける」キャリアを歩んでいますが、途中で14年間、グループ会社のちばぎん総合研究所(以下、ちばぎん総研)に出向しています。今の学生さんは1つの会社で長く働くイメージを持つ方は少ないかもしれませんが、私のように同じ会社でも色々な経験を積むことができることは、お伝えしたいなと思います。

私の大きな転機は2回、ちばぎん総研に出向した時と、50歳で銀行に帰ってきた時です。入行後、2回の育児休業を取得しましたが、まだ育児との両立が困難な時代で、思い出したくもないような出来事もありました。それが一転、ちばぎん総研に出向したことで環境が変わり、自分のペースで仕事ができるようになり、育児との両立にはプラスだったと感じています。

その後、千葉銀行に帰ってきました。ちばぎん総研でのキャリアを邁進しようと考えていた矢先の帰任でした。銀行で取り扱う商品が大きく変わったこともあり、過去の経験が活かしきれず、50代で銀行に戻って役に立てるのだろうかと、正直戸惑いもありました。しかし、全く違う仕事を経験してきたことが、一貫して銀行で働いてきた周囲の人が持たない、私の強みになっていると気づきました。その強みを発揮することで、今に至っています。

西原さん(以下、敬称略):私は東京大学を出て、日本銀行(以下、日銀)に入りました。そして15年経った頃、日銀でロンドン事務所への赴任を公募するという新しい取り組みがありました。家族に相談したところ、私以上に乗り気でした。夫は公務員なのですが、自分もロンドン赴任があるかもしれないから、ぜひ受けよう!と。夫からとても前向きな返事をもらったので、チャレンジしたところ無事に受かり、当時2歳と4歳だった二人の子どもを連れてロンドンに行きました。

その後、ロンドン駐在中に、夫のニューヨーク転勤が決まりました。私は子どもと一緒に日本に戻るべきかと悩んでいましたが、子どもたちが遊びながら英語で話している姿を見て、自分が仕事を辞める決断をし、家族みんなでニューヨークに行くことにしました。

そして、ニューヨークで約2年半、コロンビア大学にも在籍した後に、現在のマーケットの仕事に就きました。銀行アナリストになると、メガバンクの頭取や社長など、新聞でしか見たことがなかった方々に直接話を伺うことができます。その中で感じたのは、日本企業は組織がしっかりしていて、役職に応じて仕事の範囲に仕切りがある一方、外資系企業は1人で何でもやらないといけないということでした。遠慮していると、そこにいないも同じと思われてしまうため、知り合った銀行界の方々からご指導をいただきながら10年ほど懸命に働き、そして、昨年(2022年)株式ストラテジストに抜擢されました。

西原:日本では、女性役員は多くありません。ダイバーシティには色々な意味がありますが、日本を含むアジアではジェンダーダイバーシティが課題です。そのような中、やる気がある人にはチャンスを与えようとなり、私は抜擢してもらったのだと思います。ですので自分なりに、自分にしかできないやり方で恩返ししていきたいと考えながら日々を送っています。

淡路:私はずっと国内で働いてきたので、西原さんのしてきた経験とは少し異なります。当時の大卒採用は、男性100人に対し女性は10数人というような時代でした。さらに、私が営業店にいた育児介護休業法が成立したばかりで、その翌年に育児休業を取りたいと上司に相談すると、なんだそれはと反応されるような状況だったのです。

私がちばぎん総研に出向したのは、公募がきっかけでした。営業店で子育てしながら働くのはもう限界だなと思っていたところだったので、飛びつくように応募したというのが本当のところです。ただ、いざ出向すると、上司から「自分の部下を育て、部下の給料を上げることが上司の仕事だ」という貴重な教えを受けました。育児中であることを織り込んだうえで、一社員として期待してくれる上司を含め、今まで色々な方に抜粋してもらったからこそ、今の私があるのだと思います。

淡路:時折、「女性は管理職になりたがらない、だから抜擢しない」という話を聞きますが、女性は本当に管理職になりたくないのでしょうか。私が今のポジションにいてやらなければならないことは、管理職や役員のやりがいや魅力をお伝えすることだと感じています。

 女性は出産などで、数ヶ月間は職場から離脱することになります。その期間に女性が育児も家事も全部行ってしまうことで、男性は家のことができなくなってしまいます。そうすると女性が職場復帰すると「ワンオペ」の状況になってしまいます。

今は、男性の育休取得も推進されているため、こういったことは徐々に無くなると想定していますが、長く仕事を離れてしまうと、仕事に対する思いや魅力が薄れ、スキルもダウンします。ですから安易に長く育休を取らず、できるだけ早く職場に戻ることをお勧めします。

そして管理職になるチャンスがやってきたら、ぜひやっていただきたい。責任は大きくなりますが、自分の上にも管理職、役員がいるわけです。その人たちに相談していくことで、その責任はシェアできます。みんなで知恵を出し合って課題解決にあたれば良いのです。必ずしも自分ひとりが大きな責任を負うものではないのです。

役員になると、途端に会える人が変わります。お会いする方の役職が上がると、交換する情報も変わりますし、そうやって得た情報を持って、会社の戦略を考えたりできるようになります。また、人生において特別な経験ができるようになるので、チャンスがあればぜひ掴んでいただきたいと思います。

西原:私が学生の頃は、1つの会社でずっと働くのが当たり前という時代でした。私も日銀でずっと働くと思っていましたが、やはり自分の人生って分からないものです。たとえば家族について、どういう方と結婚するのか、子どもが生まれるのか、いつ生まれるのか。私の場合は夫のニューヨーク転勤が一つの転機で、色々考える中で自分が一旦仕事を辞めようと思いました。

その経験から皆さんにお伝えしたいのは、これからは産業構造も変わっていくし、転職する人も増えているので、「1つの企業に縛られず、自分でキャリアを決めてほしい」ということです。こういう仕事をしたい、昇進したいということだけでなくていいんです。家族全員で、サステナブルにより長く働けるということや、自分の体や家族の介護のことなどを考えながら、自分でコントロールしていく。そして、それをきちんと上司に伝えていく。自分のキャリアを自分で作っていくということが、昔より求められていると思います。

私も結果的に、日銀から市場での仕事に移って良かったと感じています。まず、外の世界が見えたということです。階層の中でできる仕事が決まっていたところから開放されて、自分の考えに従って取り組むことができるようになりました。こういう働き方があるということを知ると同時に、あらためて日銀で仕事していたのはすごいことだったと分かりました。日々色々な失敗をしてしまう中で落ち込むこともありますが、振り返ってみると、その時々の経験が次に繋がっている、あるいは自分で無意識に繋げようとしているんです。

自分で歩いてきた道のりを振り返って考えてみれば、過去の経験をもとに自分にしかできないこと、人よりもできることが見つかるはずです。これを積み重ねると、自分ならではのキャリアが打ち立てられていきます。

あとは「リスクは恐れない」ということ。それは困難に立ち向かった時、逃げたいと思う時に、できるだけ逃げずそこでがんばるということです。一度逃げたら次も逃げてしまうだろうなと思うので、なるべくがんばるということを、自分には課してきました。どこまでのリスクを自分が取れるかというのは自身の判断だと思いますが、皆さんもぜひ少しずつでもチャレンジして、ステップアップしていってください。

(後半へ続く)
※インタビューの全文を読みたい方はこちら


淡路さんと西原さんには、2月1日(木)に本学けやき会館で開催されるイベント「フォワード・キャラバン 将来へのバトン」にご登壇いただきます。当日は、社会の一線で活躍する様々なリーダーによる講演やパネルディスカッション、学生と社会人の先輩たちとの交流を予定していますので、学生の皆さんはぜひご参加ください。

※記事に記載された所属、職名、学年、企業情報などは取材時のものです

この記事をシェアする

SPECIAL

HOMEに戻る