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70本を超える論文の中から最優秀論文賞を獲得!法政経学部・後藤ゼミのチームリーダー2人が受賞の喜びを語る

※記事に記載された所属、職名、学年、企業情報などは取材時のものです

経済学の観点から社会課題解決に向けた政策提言を行う論文が評価対象となる2023年度「WEST論文研究発表会において、70本を超える論文の中から千葉大学法政経学部・後藤剛志ゼミに所属する2つのチームが、最優秀論文賞を含む上位5本に選出されました。

今回は「論文執筆も本格的なプレゼンテーションも初めて」ながら、最優秀論文賞を獲得した田嶋班リーダーの田嶋航英さん(3年)、優秀論文賞を獲得した島田班リーダーの島田凌さん(3年)のお二人を中心に、発表までの苦労した道のりやこれからについてお話を伺いました。

※学年は取材当時(2023年度)のもの

法政経学部の後藤剛志先生(上段中央)とゼミ生の皆さん

論文執筆も本格的なプレゼンも初めての経験ながら、徹底した行動とチーム内外の協力でたどり着いた受賞

――このたびは受賞おめでとうございます!まずはそれぞれのテーマと研究内容について教えてください。

最優秀論文賞を獲得したリーダーの田嶋さん
優秀論文賞を受賞したリーダーの島田さん

田嶋さん(以下、敬称略):ありがとうございます。私たちが取り組んだのは、「女性の就業と待機児童の関係について」です。労働力人口がどんどん減っていく中で女性の社会進出自体は進んでいますが、それでもまだまだ課題が多いと感じていたので、この内容をテーマとしました。

女性の社会進出に関して一番大きな課題は、主に30代の方が直面する「仕事と育児の両立」です。これを促進する仕組みとして「産休・育休制度」「託児所の設置」「学童保育の充実」という3つが重要であると考えました。ですが、現状分析を行ったところ、なかでも「学童保育」に対する取り組みが相対的に不足していることがわかりました。

そこで、学童保育の充実がいかに女性の社会進出に好影響を与えるかについて分析を行い、結果として「場所の確保」「人材の確保」という観点から学童保育を充実させることで、育児をする女性が希望通りに就業することができる可能性が高まることを導き出し、政策として提言しました。

島田さん(以下、敬称略):私たちのテーマは「中学校教員の負担軽減に向けた新たな部活動運営の検討」です。私たちは3人のチームだったのですが、偶然にもみんな塾講師のアルバイトをしていたんです。そのような背景から学校教育をテーマにしたいという話になり、調べていく中で、近年学校の部活動を地域クラブ活動として運営する「部活動地域移行」という政策が積極的に行われていることを知りました。

部活動地域移行が推進されている背景に、中学校教員の長時間労働問題がありますが、実際に労働時間を減らせているのかについて分析されていなかったので、私たちが取り上げることで価値のある政策提言になるのではないかと考えました。

分析するにあたり、47都道府県の「部活動地域移行の実施報告書」を全て読み込み、その中で教員の労働時間データをまとめていた茨城県の調査を行いました。同県内20以上の市町村に電話をしたり、資料の開示請求を行ったりしながらデータを取得し、分析を進めていきました。

その結果、部活動地域移行は中学校教員に対する労働削減効果があること、また、「単独校方式」*と「複数校方式」*のどちらにおいても同程度の効果があるという結論を導き出すことができました。それらの結果を踏まえ、「人材不足・受け皿不足」「地域・学校・家庭の連携」「ハラスメント・行き過ぎた指導」「単独校・複数校の方式の選択」という4つの課題の解消施策も含めた政策提言としました。

*「単独校方式」は、従来通り1校ごとで部活動を行う形式のもの。「複数校方式」は、複数校が合同となり1つの部活動を行う合同部活動の形式のもの。どちらも部活動指導員は外部の地域人材を活用する。


――お二人は論文執筆も本格的なプレゼンテーションも初めてだったと伺いましたが、どのような点が難しかったですか?

活動を振り返る島田さん

田嶋:分析の視点を導き出すこと、データの整理にとても苦労しました。私たちのテーマは先行研究も数多くあったので、海外を含め相当な数の論文を読み込んだり、さまざまな属性の方に聞き込みを行ったりしながら政策を検討していきました。多角的にアンテナを張り調査する中で、それまで小学1年生から3年生までだった学童保育の対象学年が2015年に6年生までと全学年に拡大されるという変化があり、この前後で分析することが効果的ではないかと考えました。

分析を行うにあたり、国勢調査から女性の就業率をベースにすることを考えたのですが、市区町村合併の前後のデータをどのように整理して突き合わせるかという点が非常に難しかったです。ここは4年生メンバーにさまざまなアドバイスをもらいながら乗り越えることができました。

島田:私たちが一番苦労したのは、チーム内のコミュニケーションです。3人と少人数のチームだったこともあり、一人ひとりの考え方の違いが大きく影響しました。そういった状況もあって、夏休み前までは他の班と比べても進捗が遅れてしまっていました。そんな中で、夏休みのゼミ合宿で話し合えたのが転機となって「本音が言える関係」を築けたのかなと思います。それをきっかけに、進行がスムーズになっていったかなと感じています。

また、市町村からデータを集めるのにもとても苦労しました。開示請求って少しネガティブに捉えられてしまうこともあるんです。そこで、先生からのアドバイスもいただき、どのような目的で使用したいのかを資料にまとめ、丁寧に説明しながら協力を仰ぎました。結果的にデータが揃うまで1カ月以上かかってしまいましたが、行政の方とも良好な関係を作ることができ、受賞報告に行った際には「よくがんばったね、よかったよ」とお褒めの言葉もいただきました。

受賞の決め手は「独自の視点」と、積極的に行った「実地聞き取り調査」

――周りの協力もありながら、チーム全員で積極的に行動されていったんですね。今回の大会では、どのような点が評価されたと思いますか?

幅広く行った調査について、細かく話してくれた田嶋さん

田嶋:一つは聞き取り調査を幅広く行ったこと。こども家庭庁や市役所、学童クラブ、企業などさまざまな立場の方にお話を伺ったことで、結論に説得力を持たせられることができたのかなと考えています。

また、仕事と育児の両立において学童保育の充実が最も重要であるという視点を提示できたこと、なかでも「家事のほかに仕事」「通学の傍ら仕事」をする方ではなく、長時間労働を行う「主に仕事」と答えた女性就業者のみに、効果が確認できるという明確な結論を導き出せたことも大きかったと考えています。

さらに、スライドのデザインについても評価していただきました。最初は情報をかなり詰め込んでしまったのですが、週1回のゼミで先生や4年の先輩のアドバイスを受けながら、伝えたい要点を絞れるよう徹底的に削ぎ落とす作業を行いました。アイコンなどもうまく使いながら、最終的には視覚的にも分かりやすい資料にすることができたと感じています。

島田:私たちはテーマの新規性が評価されたのだと思います。部活動の地域移行はすでに推進されているものの、その効果について論じられていなかった中、私たちが導き出すことができたという点です。

ちなみに大会終了後、大阪府に実際に政策提言を行いました。非常によい論文だったと評価いただくとともに、府で実際に行っている事例も伺いながら、「地域ごとの特性も踏まえた取り組みにしていかなければいけないだろう」というアドバイスもいただきました。

ほかではなかなか経験できないゼロからのプロジェクト立ち上げ。メンバーを巻き込みながら、「ゼミの同期」から「かけがえのない仲間」へ

――大会に参加した感想や、今後の目標などを教えてください。

田嶋:活動から一番得たものは、「困難に直面したときも、諦めずに真摯に取り組むことの重要性」です。この活動を通して物事に真摯に取り組むことが人を巻き込むことにつながると実感したからです。一人ではできないことも、チームになれば乗り越えられることが多くあります。そのために「参加したい!」とどのように思ってもらえるかについて考え、行動することが必要だと、理解できたと思います。

また、他大学の発表を聞いているときは、驚きの連続でした。私たちの分析手法については多少自信を持っていたんですけど(笑)、他のチームの視点は自分たちに全くないものだったりしたので、これはすごいなと素直に感じながらも本当に勉強になりました。

ゼミ内でプレゼンの練習を繰り返し行った 
先輩やゼミ生と協力して、まとめあげた

島田:プロジェクトの進行能力が上がったと思います。この取り組みは本当に自由度が高くて、テーマ決めから分析手法の選定、スケジュール進行に至るまで全て自分たちでやらなければいけないので、模索しながらではありましたが色々と考えて行動したことはすごくいい経験でしたし、学びになりました。

――最後に将来の後藤ゼミ生へメッセージをお願いします。

田嶋:大変ではあるんですけど(笑)、その分メンバーとの絆も深まり、最高の仲間ができました。この学科、そして後藤ゼミに入ったおかげです。みなさんにもぜひ経験していただきたいと思います。

島田:私はゼミに入った決め手が、「卒業するまでに何か一つやり遂げたい」と思ったことだったんです。実際に貴重な経験ができましたし、私自身も成長できたと思います。何か一つでもやり遂げたい、と思っている方はぜひ後藤ゼミに来てください!


<先生・先輩からのメッセージ>

後藤先生:ゼミでは計量分析を基礎的な知識から進んだ内容まで学生が自分の意欲に応じて自由に学習できるように事前学習の機会を設けているのですが、どの班も学生が自ら意欲的に進んだ内容の分析に挑戦していて、すばらしかったです。最優秀賞をとった田嶋班は国内だけでなく、海外の先行研究も含め、論文を読み込んでいましたし、聞き取り調査も積極的に行っていて、学術と実務の両面からテーマに向き合っていたと思います。

また、テーマに関するアンテナを高く張っていたからこそ、非常によい視点で論文をまとめられたんじゃないかなと思います。

島田班は遠くに住んでいるメンバーが多かったのですが、通学する電車の中でもPCを開いて、活動に熱中して取り組んでいる姿が印象的でした。また、市町村や都道府県、スポーツ庁などに自ら連絡をとって情報収集するといった行動力もすばらしかったです。現場の方の意見を吸い上げて活動を進めた分、大阪府への政策提言や発表の場で実務家の方と内容の濃い議論ができていたように思います。

ゼミ生の活動を話す後藤先生

また今回のインタビューには参加できませんでしたが、「日本における宿泊税の導入効果」というテーマで、伴雅人さんをリーダーとした伴班も論文を発表しています。

彼らの研究は、訪日観光客の増加などで観光客の受け入れ財源の不足が問題となる中で、宿泊税に着目し、宿泊税導入が観光客減少という副作用をもたらさずに観光客受け入れの新たな財源として活用できるかを調べたものになります。分析では大阪府の宿泊税導入に着目し、宿泊税が観光客数には影響しなかったことを示していて、新たな財源として有望だと考えられることを明らかにしています。他の2班が受賞したWESTという大会では受賞は叶わず悔しい思いをしたのですが、諦めずに活動を続け、ISFJ という別の論文大会では分野毎の優れた論文に与えられる分科会賞を受賞しました。

学生たちは今回、本当にいい経験ができたのではないかなと感じています。今後もこの経験を大切に、これからの人生を充実させていってもらいたいですね。

ISFJにて分科会賞を受賞した伴班

砂川さん(4年生):私たちが昨年参加したときは1チームしか賞を取れなくて、悔しい思いをしたんです。そんな中で後輩たちが華々しい賞を受賞してくれて、先輩としても鼻が高いです(笑)。

昨年との違いは、実地調査を数多く行っていたところだと思います。もちろん私たちも行ったのですが、今年のメンバーは昨年よりも様々な自治体に調査を行い、より現場のリアルを把握することができました。私たちは普通の論文とは異なる「政策提言論文」というものを執筆するので、良い分析だけでは評価されません。その分析を踏まえたうえで、現実に寄り添い、実現可能性が高い政策提言をすることができた論文が評価されます。したがって、様々な自治体の声を反映した政策提言ができたことが賞に結びついたのかなと思います。

ご自身の大会出場時や後輩の頑張りを振り返る砂川さん

4年生は就職活動や自身の卒業論文の執筆で忙しい時期ではありました。それでも後輩たちのサポートができたのは、後輩たちが頑張っている姿があったからです。私自身も、後輩たちが課題に向き合い試行錯誤を繰り返している姿を見て、昨年の自分たちを思い出し、後輩のためにと行動できました。もし、私たちの経験やノウハウを伝えたことが受賞につながっていたとしたら、とてもうれしいです!


後藤ゼミのみなさん、貴重なお話をありがとうございました!

最後は後藤ゼミお決まりのポーズでパシャリ

※記事に記載された所属、職名、学年、企業情報などは取材時のものです

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