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“関わりのシャワー”が子どもたちの心を育む 学生ボランティアに聞く「千葉少年友の会」の活動

※記事に記載された所属、職名、学年、企業情報などは取材時のものです

NHKの連続テレビ小説「虎に翼」が惜しまれながら放送終了しました。主人公、寅子のモデルになった三淵嘉子さんは日本で初の女性弁護士。その後、家庭裁判所創設や「少年友の会」の設立に深く関わってきました。
「少年友の会」は家庭裁判所に送致された非行少年たちを更生させるために、家庭裁判所が行っている教育的な働きかけに協力している民間のボランティア団体で、全国の家庭裁判所に対応して少年友の会があります。「千葉少年友の会」には多くの学生会員がおり、千葉大学の学生も参加しています。
今回は「千葉少年友の会」で学生ボランティアをつとめる法政経学部 4年生の鎌田紗代さん伊林みそらさん、2年生の川上竣太郎さん、学生ボランティア委員会に所属して学生ボランティアをサポートしている横手京子さんにどんな活動をされているのか、お話を聞きました。

鎌田さん:学習支援、街頭清掃活動、フラワーオペレーション、フラワーリレーションに参加
伊林さん:街頭清掃活動、フラワーリレーションに参加
川上さん:短期補導委託先付き添い、切手整理活動に参加
横手さん:千葉少年友の会の学生ボランティアのサポートを担当

――千葉少年友の会は、どんな活動をされているのか教えてください。

横手さん(以下、敬称略):少年友の会では、現役の調停委員と調停委員のOB・OGが活動しています。非行少年が行う社会奉仕活動、非行少年の保護者、非行少年を預かって更生させる補導委託先に対する支援など、様々な活動を通して非行少年の立ち直りを支えていくことを目的とした団体です。
実は『虎に翼』の主人公のモデルとなった三淵さんは、家庭裁判所に協力する「少年友の会」を立ち上げた方なのです。
千葉少年友の会は、当時の千葉家庭裁判所長であった野田愛子さんの提案を機に、昭和59年に発足しました。野田さんはその前に、三淵さんと共に昭和41年の「東京少年友の会」の立ち上げに関わっています。その後、少年たちのために活動の幅を広げていき、現在私たちはその活動を引き継いでいます。

――とても歴史のある団体ですね。社会活動の内容は時代とともに変化しているのでしょうか。

横手:そうですね。時代に合わせて社会奉仕活動の内容は変わっているように思います。例えば以前は、里山の環境を整備する活動なども行っていたようです。最近では、SNSが関連する非行が増加しているので、SNSの使い方を見直し、その危険性などを学ぶワーク活動を近々実施する予定です。

――3人は学生ボランティアとして活動に参加しています。具体的にどんな活動に参加されているのですか?

鎌田さん(以下、敬称略):私は少年の「学習支援活動」、「街頭清掃活動」、「フラワーオペレーション」、「フラワーリレーション」に関わっています。
フラワーオペレーションとは、成田市にある花の苗を栽培する農場でお手伝いをする活動です。花のポットを綺麗に並べて肥料を入れ、そこに花の苗を入れて育てます。少年、その保護者、学生ボランティア、少年友の会のスタッフとともに協力し合うので良い刺激になります。
フラワーリレーションは、フラワーオペレーション活動で育てた苗を、高齢者施設などに持っていき、同じく少年、その保護者、学生ボランティア、少年友の会のスタッフがチームで一つの花壇に植え替えていきます。フラワーリレーションでは、このチームワークも大切な作業となります。農場の方のアドバイスを受けた後、自分達の好きなように植え込みをアレンジできるので、作業するチームの個性が出るのが面白いところです。

伊林さん(以下、敬称略):私も鎌田さんと同じく、「街頭清掃活動」、「フラワーリレーション」に携わっています。団体活動は巡り合わせのようなもので、毎回顔ぶれが異なり、一期一会です。だからこそ緊張感もありますが、新たな出会いもあり楽しいです。

川上さん(以下、敬称略):私は「切手整理活動」と「委託先付き添い」という二つの活動に参加しました。切手整理活動は、使用済みの切手を封筒や葉書から切り取って箱詰めする作業です。この活動では、少年とともに使用済み切手を台紙から切り取り、種別を確認・仕分けし、切手の重さを量ります。その切手は換金され、アジアやアフリカでのワクチン購入代金に充てるなどの医療活動に使われます。委託先付き添い活動では、精神疾患を持つ方々の就労支援施設で少年と一緒にボランティアに参加し、缶バッジを個包装する作業をしました。

――どんな点に興味を持って学生ボランティアに参加されているのでしょうか。授業がきっかけで応募したのか、個人的に興味があったのか、とても気になります。

川上:参加を決めたきっかけは、1年生のときに大学から届いた「学生ボランティア募集」のメールでした。もともと法学の実務に興味があり、裁判所の業務に直接関わることができるこの活動に強く惹かれました。

鎌田:私は少年法の授業を受けているのですが、授業のなかで少年の健全育成について学んでいたことがきっかけです。その後大学から届いた学生ボランティアの募集メールを見て、応募しました。

伊林:私も授業がきっかけです。講義では、実際に家庭裁判所の調査官がいらして、家庭裁判所でどういう活動をしているかを話してくださいました。ただやはり話を聞くだけではなく、実際に非行少年たちがどのように過ごしているのかを自分の目で知りたいという思いがありました。


――実際に少年たちと接してみてどう感じましたか?

伊林:非行をした少年ということで、最初は「どんな雰囲気なのだろう?」と接することに躊躇する気持ちもありました。ところが実際に少年たちと活動を共にすると、彼らはとても積極的で、驚きました。

鎌田:最初に少年と接した時、活動に対してとても意欲的だな、と感じたことが心に残っています。特に活動の一つである、学習支援活動は1対1の個別活動です。活動開始した瞬間からしっかり話してコミュニケーションをとります。話を重ねる時間は純粋に楽しいですね。
団体活動だと、ボランティアや少年の保護者、家庭裁判所の調査官、少年友の会のスタッフと大勢の人がいらっしゃいます。最初は、「グループの中だと少年と話しにくいかな?」と思っていましたが、家庭裁判所の調査官や少年友の会のスタッフが、学生と少年が接することができるように促してくれたのでありがたかったです。少年友の会の方から教えてもらった「まず挨拶をすること」のアドバイスを、いつも心がけています。

川上:非行少年と聞いたとき、「自分はうまくコミュニケーションできるだろうか?」と不安に感じることもありました。しかし実際に接してみると、少年たちは私にも積極的に話しかけてくれ、活動にも前向きに取り組んでいたので、当初の不安は自然と解消されました。私が委託先付き添い活動に参加した際も、長時間にわたって同じ作業を繰り返すことが想像以上に大変で、心身共に疲労を感じました。それでも少年は積極的に施設の方々と会話を交わし、私にも丁寧に作業内容を説明してくれました。少年は積極的で、とてもフレンドリーな印象を受けました。

伊林:私の参加する街頭清掃活動は団体行動なので、たくさんの人と関わります。千葉駅周辺で清掃活動をするのですが、行動しているなかで「これはどうやって進めようか?」「ちょっとゴミ袋を広げてもらってもいい?」と、やりとりの上で会話が生まれていきます。時には「暑くて危険だから水分補給しよう」「車が来るからここは危ないよ」と注意をしあうこともあります。
実際に少年たちと接してみて、本当に「他の子となんら変わらない」という気持ちがあります。ですが、「彼らはどうして途中で道を外してしまったのだろう…?」と、気になりながら活動をしています。

――どんな時にやりがいを感じますか?

鎌田:私が初めて参加したボランティア活動はフラワーリレーションだったのですが、朝早くに起きて花壇の手入れをする活動は心地よかったです。少年と会話を重ねながら活動をして、帰り道に乗っていたバスの窓から少年が手を振ってくれたことと、その時の笑顔が忘れられません。ほんの一瞬の行動ですが「短い活動でも一緒に過ごしたことは意味があったのだな」と嬉しくなりました。

伊林:私も少年が向けてくれる笑顔がモチベーションになっています。もちろん言葉を交わすことも楽しいし、嬉しいですが、言葉だけではなく心もつながれるのかなと感じることができています。また、ボランティア活動に対する周りの方々の声掛けなども私にとって励みになっています。例えば街頭清掃活動では、街を歩いている最中に市民の方が「きれいになってるね」と声をかけてくれたことがあり、とても嬉しかったです。

川上:私が参加した切手整理活動では、一緒に参加した少年が非常に積極的で、切手を集めることに対して自ら高い目標を設定して懸命に取り組んでいました。その目標に向かって参加者全員で協力し、最終的には目標を上回る成果を達成することができました。この瞬間、達成感を強く感じましたし、それは少年にとっても私にとっても非常に有意義な経験だったと思います。

横手:活動の種類にもよりますが、各活動は概ね一期一会になります。学生さんにとってやりがいを感じるのは難しいかと思いましたが、それぞれに想いを持って参加してくれていたことは嬉しいですね。
私たちは、少年との関わりを“関わりのシャワー”と言っています。人との良い関わりをこれまで持てなかった少年たちに、裁判所や少年友の会に限らず、同じ時代を生きている年齢が近い人たちが接する中で、「応援しているよ」という思いが彼らに伝わればいいなと思っています。

――ボランティア活動を通じて得たことはご自身の糧になりそうですか?

川上:私は現在2年生なので、まだ活動に関わる機会があります。来年度は別の活動に挑戦し、新たなつながりを作ってみるのも良いかと考えています。授業の合間を縫っての活動になるので、忙しさとのバランスを見ながら無理なく続けていきたいと思います。

鎌田:私は次の春に卒業です。今後は裁判所に関わる仕事をしていく予定です。ボランティア活動を通じて少年と信頼関係を築いていった過程は、仕事をする中でも活きるのではないかと思っています。学生のうちから、実際に非行をしてしまった少年と接する経験ができたことで、視野も広がったと感じています。

伊林:私はこの先中央省庁で、政策立案の仕事をする予定です。政策というと、どうしても机上での話になりがちです。ボランティア活動への参加を通じて、実社会で起きていることについて、地に足がついた活動の中で経験することの大切さを学び、自分の中での課題意識、問題意識がよりふくらみました。

川上:このボランティア活動に参加したことは、自分自身の成長と社会貢献の両方を実現できる、非常に貴重な機会となりました。まだボランティア活動に参加していない学生の方には、まずは興味のある活動に勇気を持って参加してみることをお勧めします。どのような活動であっても、そこで得られる出会いや経験、学びは必ず自身の成長につながり、将来の糧になるはずです。自らの可能性を大きく広げるためにも、ぜひ挑戦してみてください。

横手:みなさんとても意識が高くてびっくりしました。少年に対して、大人の私たちが関わることは大切ですが、大人と接するだけでは得難いことが、学生ボランティア活動にはあります。若い学生さんが一つのモデルとなって少年に接してくれることはありがたいことですし、学生のみなさんがボランティア活動を通して発見や学びがあり、双方向で影響し合えることが素晴らしいと思っています。
学生ボランティアには、千葉大学法政経学部の学生が多く参加していますが、他学部の学生や大学院生、また他の大学の学生も参加しています。今後は、学部や大学を超えた学生ボランティアメンバー同士の交流にまで発展していくことを楽しみにしています。

貴重なお話しありがとうございました!千葉少年友の会のご活動を応援しています!

※記事に記載された所属、職名、学年、企業情報などは取材時のものです

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